管理人・白野 識月<シラノ シキ>の暴走度90%の日記です。 お越しのさい、コメントしてくださると嬉しいです。
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「土方さん」

「ん~、どうした?」

「リモコンを頭におもいっきり投げつけたら人って死にますかね」

「・・・微妙。ってかそれ誰にやるつもり?」

「それは、勿論、ひ・・・」

「聞かなかったことにするわ」






真面目な話、リモコンは殺傷能力低いですよね。
ってどんな話だ。
いまデスノがものっそい欲しい。心のそこから欲しい。
このデスノが漫画の方か、それとも殺人ノートのことかは御想像にお任せします。





それでは、文芸部に出そうと思ってる話のできたとこまで。














願いは、いつかきっと叶う。





想い華 壱





最初の記憶を辿ると、黒髪を緩めに束ねた美しい女性と、その足許に縋り頼りなく立つ、その女性に似た幼い子どもの姿が出てくる。女性の着ていた、黒地の着物に艶やかに咲き乱れる彼岸花の華々しさが鮮やかに思い出される。
見覚えはあるが、彼女らの姿を見たことはない。それ故、あの記憶はドラマのワンシーンか何かに思えるのだがそんな作り物めいた場面じゃない気がする。

かくん、と頭が落ちる感覚にハッと目が覚める。
見慣れた真新しい畳に紅に縁取られた障子。またこんなところで寝ていたのかと思いつつ立ち上がる。と、足にかけられていた朱色の羽織がハラリと舞い、畳に落ちた。
いつの間に、誰が。
思いあたるのは一人しかいない。

「おい、雫」

「なァに、聖羅」

リン、と頭に差した鈴の簪を雅に鳴らしながら雫は部屋に戻ってきた。絹の手触りの良い長襦袢は薄桃色で薄く蝶の刺繍がしてある。

「寝てたら起こせ、っつってんだろ、毎回毎回」

「でも、起こしたら起こしたで怒る癖に」

それは条件反射的なものだから仕方無かろう。そう思いつつ、此処へ来た時は夕日が差していた格子窓を見つめる。
今はただ暗闇を写しているであろう時間帯だが、此の街は夜の方が明るい。
花街・吉原。
戦後に施行された赤線なんちゃら法によって、一時、“花街”というものは日本から消え失せた。・・・・・・のだけれど。数年前にその赤線禁止法がナシになった。つまり、日本のお偉いさんが遊郭という存在を認めたのだ。どういう意図だか分からないけれど。
そして復活したこの街は、以前と同じ、否、それ以上に活気に溢れている。
勿論、表面的にはという話だが。

「あっ、そういえば」

「なんだよ」

「ふーちゃんが先刻来たわ。寝てる、って言ったら帰っちゃったけど」

「風太郎が? 彼奴が来たら起こせって・・・・・・!!」

これ以上言い合ってもまた同じことの繰り返しだ。
それよりも、風太郎を探しに行かなければ。あいつのことだ、どうせまだ此の街の何処かに居るに違いない。
そうと決まったら徒な口論を避け、早く支度をしようと、着崩れた浴衣を整え、携帯と財布を懐に入れる。

「そんな大事な話なの?」

急ぐ俺を見て若干意外そうに雫は尋ねる。
俺と風太郎が揃えば最上級の馬鹿をやる。昔からそう言い切っていた彼女からしちゃあ意外かもしれないけれど。

「仕事の話なんだよ」

「仕事って・・・ふーちゃんに何か頼んだの? 探偵という看板ぶらさげたニートのあの子に?」

弟のことをよくもまぁ、そんな風にけなせるなと思うが、姉弟だからこその言葉なのだろう。ずっと親父と二人っきりだった俺には分からないものだけど。
ゴォン、と鐘が鳴り、今が十時だと告げる。
吉原の中央に位置する時計台には鐘があり、一時間置きに担当の物が鳴らす仕組みになっている。一時なら一回、二時なら二回鐘を鳴らすという仕組みだ。

「あいつだってやる時はやるんだよ。じゃあな」

「ふ~ん。また明日」

裏木戸をがらがらと開け、裏庭から路地へ出る。表通りに面していない路地故に、この通りは吉原の中では暗い方だ。それでも、普通の住宅街よりは明るいが。
時間が時間な所為か珍しく人通りは少なく、たまに二、三人擦れ違う程度だ。
懐に腕を入れ、少し冷える夜風に逆らい暗い通りを行く。
確かこの辺りの筈だと過去に一度だけ風太郎と歩いたことのある道をうろ覚えで歩き、こりゃ本格的に風邪を引きそうだと、思い始めた頃に漸く目当ての店を見つけた。
暖簾をくぐり、目の前の蓙に横になっている男を見る。

「おい、風太郎」

「お、聖羅。おはよーさん」

「俺の所にくるぐらいだからな、分かったんだろ? 頼んだことが」

「もち。さぁ、取り敢えず御上がりなさいよ色男サン」

ふざけた顔でそういう風太郎を一瞥し、起き上がった彼の隣にドカッと座る。
横に転がっていた猪口を拾い酒を煽ると、中々の高級品なのか思いの外美味で驚いた。

「いい酒だろ? こないだ仕事の報酬でもらったヤツなんだけどよ、一人で雑魚寝して飲むには勿体無さすぎてさ」

風太郎がこんな風に饒舌になるのは決まって酔っているときだ。酒に強くないくせに、一升瓶で半分程飲んだらしい。
まぁ、漸く頼んでいた仕事が終わったようだからいいけれど。

“俺に兄弟がいるか捜して欲しい”

そう風太郎に告げたのは一月、二月程前だった。兄弟がいるか、なんて世間的に戸籍謄本見れば一発で分かるらしいのだが、俺の場合はそうはいかなかった。
それなりに地位と名誉のある親父が、俺には見せないように命令したらしい。
見せない、ってことは何か隠し事があるというわけで、もしかしたらあの記憶の子どもが親父の隠し子なんじゃないか、なんてそんな淡い期待を抱いて待つこと一ヶ月。
中々名の売れている幼馴染みの探偵は気が短い。もしかしたら途中で放棄しているんじゃ、なんて考えも浮かんだがそれも杞憂で終わった。

「酒より報告が先だろ」

「はいはい。・・・・・・お前の親父さんな、妾さんがいたっぽい」

芝居じみた動作で声を潜め、距離をつめてきた風太郎が言った言葉はある程度予想出来ていた言葉だった。
もしかしたらあの黒髪の女性は、と思ったことが今までの人生の中幾度かあったし、母親は俺を産んで直ぐ死んだらしいし。

「ああ、やっぱそうか」

「やっぱ・・・って知ってたのかよ」

落胆したように肩を落とし項垂れる風太郎を横目に、もう一口、と猪口を煽る。
若い頃、とはいっても親父が、という意味だが、彼は吉原に入り浸っていた。
さっさと仕事を終わらせ、夕には此処に居て夜を明かすという生活を数年続けていたらしい。そんなんでよくもまぁ結婚したな、とその話を聞いたとき思ったのだが母との出会いも此処だったそうだ。やはり、としか言いようがない。

「で、妾がいたってことはいるんだろ? 俺の兄弟も」

「ああ、その通り。でも、いるってのは分かったんだけど、性別がわからなかったんだよ、不思議なことに」

「ハァ? 普通そこまで分かりゃァよ、」

「だから代わりに、名前調べといた」

おかしいだろ。
どうしてそうなるんだ。名前が分かるなら性別だって分かるだろう。
そうは思うが頼んでいない名前まで調べてくれたんだ、文句は言えない。

「珠羅って言うらしい」

「シュラ? そりゃすげぇ名前だな」

修羅、といえば仏教で戦いの神ではないか。女なら凄い美貌だけど男だと凄い不細工だとかいう。
それなら、女なのだろう、多分。酷い謂れのある名を子どもにつける親などいないのだから。
聞くべき事は聞いたし、と立ち上がり礼を言おうと口を開くとニヤニヤ笑っている風太郎と目が合った。

「・・・・・・。何だよ」

「これだから色男さんはせっかちでいけないわ。・・・居場所、知りたくねぇ?」





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とりあえずここまで。
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