七日・八日と二日連ちゃんで携帯をおしゃかにし(一個は朝起きたら壊れててもう一個は漂白剤につけちゃって)、凹んでた識月ですこんばんわ。
今は代理の代理携帯使用中です。
明日まで浅草で恋月姫の人形展やってるんですよ。行きたかった。明日は確実に行けないから行けずじまい。はぁぁ。明後日は体育祭だし、憂欝です。
さて、本日は何を隠そう新選組副長・土方氏の命日です。何気に母の誕生日の翌日だったりする。
命日なのに、誕生日ネタあっぷという非常にKYな暴挙。因みに銀魂ではありません。ピスメでも史実でも、風光るでもはたまたるろ剣でもご自由に想像してくださいまし。一応、イメージは燃えよ剣。
ゆらりゆらりと風にそよぐこいのぼりはいつだかの空の色を思い出させた。
稚魚の浮かぶ蒼穹
涼しげに吹く日暮れ前の風にのり、どこだかのおいしそうな夕食の香りが鼻孔を擽る。その所為か先程から機嫌良さそうな鼻歌が背後から聞こえている。
長閑だ、そう思い空を仰ぎ見るとこのまま安穏とした日々が続くような、血生臭い過去が消失するような錯覚に陥る。
それは錯覚でしかないのだが。
ふと鼻歌が止み、振り返ると暮れ始めた空を背に、沖田が道端を眺めていた。その視線の先には庭を耕したのだろう、京では珍しい小さな畑があった。
武州にいた頃は民家の数だけ畑があったといっても過言ではないくらいで、その田舎臭さが嫌いであったが今は懐かしくて堪らない。
自分が選んだ道だ、後悔はしていない。けれど沖田まで巻き込んだことは若干、後悔している。
「故郷が懐かしいか?」
「土方さん、何言ってるんです。それァ当たり前でしょう。私は土方さんとは違って京は好きですがね、故郷に勝るはずはないでしょう」
沖田の言う事は正しい。どんなにいい場所でも、故郷に勝る場所等はないのだ。
けれど、自分が尋ねたのはそう意味合いでは無く、後悔をしていないか、帰りたいとは思っていないかといったことだ。
勘の良い沖田のことだ、分かっていて、はぐらかされたような気もするけれど。
「後悔は、無いか?」
「・・・その言い方だと、まるで土方さんが後悔しているみたいですね」
「―――ッ」
「土方さんのことだ、強がって後悔なんざしてねぇ、とか言うでしょうけど、近藤さんだって原田さんだって皆、後悔してると思いますよ」
香ばしい風が沖田の黒髪を弄ぶ。遠くを見つめたまま沖田は郷愁の色を顔に浮かべた。
きゃあきゃあと家へ急ぐこども達が脇を走り抜けていく。風車を片手に走る彼らにふと、幼き日の沖田が思い出される。彼らと沖田は真逆で、面影が被りもしないというのに、奇怪だ。
笑みなど滅多に見せない無表情なこどもで、気紛れで風車を渡したときも喜ぶでもなく感謝するでもなく無表情で風車を回して遊んでいたのを覚えている。
「お前はどうなんだと言っている」
「後悔かァ・・・。してるかもしれませんね。それより私は、姉上が心配でありませんよ」
コツン、と沖田は足元にあった石を蹴り、土方の隣に並び立つ。
にこりといつ何時も浮かべている笑顔の仮面を剥がすことは誰にも出来ない。
何を偽って笑うのか、沖田は聡く他人の心に敏感だが逆に沖田の考えは微塵も分からない。
「土方さん、ほらあそこ・・・こいのぼりですよ」
いつものようにはぐらかされてしまう。
が、まあそれもいいか。
つられて青空を見上げると立派な鯉が広い空を泳いでいた。高く高く、上を目指す姿は俺たちとさして変わらない。
「土方さん」
「なんだ?」
「誕生日おめでとうございます」
「・・・」
記憶の糸をまさぐって、漸く、今日は自分の誕生日なのだと思い至った。日々の忙しさについうっかり忘れてしまっていた。誕生日なんか覚えていても意味はは無いと毎年毎年忘れてしまう。
そういえば去年も沖田だか近藤に言われて自分の誕生日を思い出した気がする。
毎年毎年同じ繰り返しだ。
「ありがとな」
「土方さんが素直にお礼言うなんて気色悪いですね」
「お前な・・・」
「“鬼の副長”の誕生日がこどもの日だなんて皮肉なものですね」
くすくすと笑いながら沖田は歩き出す。
「今日は私がお団子奢りますよ」
「そりゃあ、ありがてぇ」
浮き足立った沖田を眺め平和だと改めて実感した。
そんな、京で迎えた数度目の誕生日。
#7
天の原 ふりさけ見れば 春日なる
三笠の山に 出でし月かも
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