こんにちわ!明日から修学旅行・・・!ドッキドキな識月です。まだ持ち物の準備してません(笑)
では小説。出来たけどあと一話ぐらいありそう・・・
「・・・綺麗な髪ネ」
「アンタも、」
髪がピンク色だ。月夜に映える白い二本の足、真っ赤なチャイナドレス。街中でみかけたら思わず振り返るような、殺人や万引きに絶対向いてない格好だな、なんてぼんやり思った。
その女はしゃがみこみ、猫にミルクを上げると愛しそうに頭を撫でた。その姿を見て、こんなトコにつっ立ってても意味ないし、と背を向けると、引き留めるように声をかけられた。
「猫、お好きなの?」
歩き出そうと前に出した足を引っ込め、どうせこの後何も用事ないし、と猫に視線を戻した。
「とあるお人が、俺に似てるっつうんでさァ」
「あら・・・彼女アルカ?」
独特な話し方に度肝を抜かれたけど俺の事だ、顔にはちっとも出てなかっただろう。思った事を顔に出さない、どんな時でも豹々としてて、どうでもいいやつには決してこびない。そんなとこ全部が、猫みたいでムカつくと土方さんは言ってたけど、俺的にはあの人のほうが猫みたいだと思う。
「全然違いまさァ」
「・・・ふーん、そうなの」
「職場の上司ってか目の上のたんこぶ的な存在のヤローが言ってやして」
「私も部下に言われたヨ。お前は猫のように誰も頼らず、一人でやってるよな。頼ってるフリをしてんだけど、足手まといになったらすぐ切り捨てるだろ、って」
「それは、猫なんで?」
「平気で裏切るって言いたいんでしょう」
じゃあ、土方さんもそうだったのだろうか?お前もいつか、裏切るんだな、って?
あの時の苦虫を踏み潰したような顔も憶えている。悟ったような、声も。 裏切る前に、俺と土方さんには絆も信頼もないのに。
考え事を読んだかのように、女は口を開いた。
猫が、ミルクを飲み終えてどこかへ行った。
夜光の裏側
「こないだの人ネ?警察の人だったの・・・」
「そういうアンタも」
ちっとばかし驚いた。知り合いがやってるとは思っていなかったから。いや、知り合いじゃないか、ただ、一度話をしただけの人。だけど、
『仕事は仕事だ。知り合いだろうが親戚だろうが、余計な感情抱いちゃいけねぇんだよ』
「この間と、同じような台詞ネ」
「・・・俺はアンタと世間話しに来たんじゃありやせん」
でしょうね、と小さく聞こえた気がしたけど、気のせいだったかもしれない。彼女は机の上に預けていた上体を起こし、椅子に深く座った。飴を机の上に転がし、音をたてず引き出しから一枚の紙切れを取り出した。
「私も時間ないのヨ」
飴の包みを手に取り口に入れると、籠から一つ、投げて寄越した。食べてみると、甘ったるいミルクの味にほんのりスゥッとするハーブかなんかが口に広がった。
これがあの人が取り返してっつってた飴玉か。意外と美味しい・・・じゃなくて。やっぱ籠ごと返して貰うべきか。
じゃなくて仕事だ仕事。
「俺、早く帰りたいんで正直に答えなせェ」
「正直?麻薬の密売なんて、するわけないでしょう」
正論だ。だけど、火がねぇとこに煙はたたねぇとかなんとか言うし。
まァもし密売してたとしても馬鹿正直に言う訳ないんだけど。
その時、キシ―――と階段の方から足音が響いた。
「沖田さァん。何もありませんでした」
「山崎・・・。アホですかィ?堂々とそんな事言うなィ」
「何もない、ですってよ?」
クスッと嘲け笑うように微笑まれ、口角を上げ笑い返した。
「んじゃあ、その飴貰って帰りまさァ」
つかつか、と机の前まで歩み寄り、飴が山積みにしてある籠を左手に持った。きょとん、とした目で見上げられ、噴き出したい衝動に駆られたけれどなんとかやり過ごした。
「・・・待つヨロシ」
「なんですかィ?」
「お前、名前は何て言うアルカ?」
「人に聞くときはまず自分が名乗るもんだろィ」
「・・・神楽」
渋々、といった風に告げられた名前を反復し、くるりと振り返った。それに合わせ、神楽も立ち上がり、近付いてくる。
「俺は沖田総悟でさァ。まァ、多分もう会うこともなさそうですがねィ」
「それはわからないヨ?」
「え・・・?」
ニコッという笑顔と内側から閉じられた扉に、続きの言葉は憚れた。 PR