管理人・白野 識月<シラノ シキ>の暴走度90%の日記です。 お越しのさい、コメントしてくださると嬉しいです。
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気が付けば 文化祭まで あと二日。

あ、一句作っちゃった。ではなく、最近なんか寝付きが驚く程良いです。来月辺り寝付き悪くなりそうな嫌な予感がしますが。

授業でバレーやってるのですがどうやらそれで左腕の筋おかしくしちゃったらしいです。頭タオルで拭くのすごく大変でした。内側の筋を今日、外側の筋を一昨日やっちゃったから・・・。昨日も左腕痛くて、寝違えたかなと思ってたら・・・。

最近小話が書けません。普通の小説になっちゃう。














小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば
今ひとたびの みゆき待たなむ





未来日記





何処かの気違いな人間が鬼を狙い、穴を開けた障子は今はもう直されていて、綺麗に、朝日に白く光って見える。
眩しい。と、鬼は目を細める。

眩しいものが嫌いな訳ではない。白いものも、嫌いじゃない。

嫌いなのは、朝。

何処かのクソ餓鬼は、餓鬼らしく朝の方が騒がしかったりするので、昼間より機嫌の悪い朝は、より最悪な結果になる。

朝日を背負って、静かに障子を開く。
予想通り布団は丁寧に隅に追い遣られて、部屋の主は文机の上で何かを一生懸命書いている。
達筆というには聞こえの良すぎる、古代文字が紙の上でひしめきあっているのだろう。
「部屋に入るときはノックしろっつうくせに自分はしやせんよね」
「悪かったな。朝は頭が働かねぇんだよ」
脳からの伝達司令は手足に伝わる途中で行方不明になる。だから、心意気はノックした。

こんな時に襲撃を受けたら間違いなく、軽くて手傷、重くて命を落とす羽目になる。直したくても直せないこの体質は物心ついた時には体に染み付いていた。

―――――世間に知られてなくてよかった。

代わりに、一番危ないヤツがこの事を知っているけれども。
「・・・で、何の用ですかィ」
「近藤さんに起こして来いっつわれたんだよ。・・・形だけでも、来た方が良いだろ」
「俺のが朝強いの知ってるはずでさァ・・・近藤さんも」
そうだ、近藤さんもちゃんと知ってる。それでも、無理矢理俺を来させた理由は何か・・・別にある。
「心当たり、あるんでしょう?」
・・・ある。
昨日仲違いしてたから仲直りさせてやんなきゃな。きっと、近藤さんはそう思ったに違いない。口には出してないけれど、視線が言っていた。
優しい、というのは長所であるが、時に短所にも成る。だから、その逆もあるんじゃないか。
例えば、俺を見ると直ぐに何かを仕掛けてくる癖も、俺から見たら短所でしかないのだが、いつかそれに救われる日が来るのかもしれない、という訳だ。期待はしないほうがいいが。
「何書いてんだ?」
「日記を、少々」
意外な返事に、ああ、コイツにも今更思春期が来たのかと思っていると、見やすかィ? と問われた。
「・・・ああ」
本当は他人の日記など見るべきでは無いのだが、気になる。好奇心なんて柄じゃないが。

その日記は未だ書き始めらしく漸く1P書かれた程度だった。予想を遥かに上回る綺麗な字に、少し驚く。俺より上手いかもしれない。
書き始めの一行に、疑問を感じた。
「・・・五月、五日?」
「ええ、そうですぜ」
今月は五月ではない。というか、過去に遡って書いてるのだとしても、半年前のことだ、はっきり覚えているはずがない。
そこから中々読み進めない俺に、総悟は答えを口にした。
「・・・それ、未来日記なんでさァ」
「未来日記?」
「ええ。近頃近所の餓鬼の間で流行ってるらしくて。面白そうなんで便乗してみる事にしやした。なんでも、書いといたことが現実になるらしいですぜ」
成程、俺なら絶対に思い浮かばない事だ。子どもならではの遊びだ。
俺には、未来なんざ考えられない。そうしたのは自分自身なのだが。

明日、生きているかも分からないのなら今日の事だけを考えればいい。
未知は未知のままでいいじゃないか。それが未来なわけだし。

次の行に目を落とすと、普通の日記らしく“今日は、”で始まっていた。寺子屋でよく出た日記の宿題を思い出す。俺は面倒で毎日同じ事を書いていたが、近藤さんは真面目に毎日違う内容を書いていたらしい。
「今日は、寝起きの土方さんにきりかかる事から朝が始まりました・・・」
声に出して読むと、総悟が続きを暗唱する。
「その時は、裾をかすっただけだったけど、昼間、市中見回りの最中に斬りかかると、土方さんは鞘に手をかけたが反撃せずに俺に殺られてしまいました。葬式で俺は号泣してしまいました」
後頭部を狙い、日記を投げつけるが、後頭部に当たることはなく総悟の手に受け取られる。
「・・・そうでもして殺したいかクソ餓鬼」
「ヤだなァ。当たり前じゃねぇですかィ。誕生日に死ねるんだ、幸せだろィ?」
「どこがだ!!!!」
「皆が命日憶えていてくれるんですぜ?喜べよ」
そう言われても命日を勝手に(たとえ当たらなくても)予言されるのは不快極まりない。もう、そうなるとしか信じていない物言いだし。
「―――――でもよ、お前泣いてくれんだろ?俺が死んだら」
一度も見たことのない泣き顔を、冥土の土産に持って行けるのならいいのかもしれない。そういう弱さを、見たことがないのだから、最期ぐらいは―――――ってそんとき既に俺死んでる。
「・・・ええ。目薬準備しやすからねィ」
「・・・泣けよ」
まぁ、どーせというか絶対、俺は子どもの日に死なないし総悟も俺の葬式で泣かないのだが。

もしも近藤さんが死んでしまった時、彼はなくのだろうか。

そんな、ありえない未来を想像した、俺を総悟は揶揄する。
「俺が一番長く生きるんでしょうねィ・・・憎まれっこ、世にはばかるって言うじゃねぇですかィ」
「それなら俺も負けねぇよ。でも、」
―――――もしも俺がお前よりも先に死んだら、花ぐらいは供えてくれ。

呟きは朝の冷えた空気に漂う。張り詰めた糸のような変に白い顔して筆をしまう姿を、立ち去ることも出来ず見届ける。
「・・・いいですぜ。とびっきり綺麗に枯れた花を供えてやりまさァ」
強い眼差しで言う。“冗談は終わり”だとでも言うように。
一番、未来に目を向けていなかったのは、躊躇っていたのは、俺じゃなくて総悟だ。死を恐れてなんかいない、近藤さんの隣に自分がいない事の方が、遥かに恐ろしい。
「・・・だから、俺が死んだときぐれぇ泣いてくだせぇ」
「・・・玉葱用意しなきゃな」
泣く気なんざ微塵もない。それでもきっと涙は俺の意思に反して流れるのだろう。
約束を守るために。





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