管理人・白野 識月<シラノ シキ>の暴走度90%の日記です。 お越しのさい、コメントしてくださると嬉しいです。
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皆で鍋を囲んでる中、父が言った一言。

「マヨネーズ持ってこい」

マヨネーズ!?と聞き返す声が母と重なる。瞬時に脳裏に浮かぶのはとある漫画の生活習慣病予備群。
・・・びっくりしました。ちくわに掛けてました。よかった。ついに我が家にマヨラーが、と思いました。ああびっくり。

それではスランプ気味だけど初期で百人一首。













難波江の 蘆のかりねの ひとよゆゑ
みをつくしてや 恋ひわたるべき





母国情緒





授業終了のチャイムの音とともに、馴染みの二人があたしの側に寄ってくる。眠りこけそうな頭をなんとか覚醒させ、顔を上げると丁度前の席にその二人が座ったところだった。
朱色の髪の中国からの留学生と、黒い髪の地味な少年。
一昨年まで男子校だった此処は、女子が極端に少ない。三年は全員男だし、二年の女子は十人いるかいないか、一年はあたしを含めて十三人。
それに女子といっても親友、は男子。というどちらかというとあたしみたいな男子から見て恋愛対象に入らないような女子ばかりだ。
「本当なんですか沖田さんっ!!」
「・・・何が?」
いきなり詰め寄られて目を点にすると、新八の言葉を補足するように神楽がおにぎりを食べながら口を開いた。休み時間の度におにぎりを食べているのにあたしよか小柄なのは体質のせいか。胃袋がブラックホールなんじゃないだろうかと思う程よく食べる。
「土方と付き合ってるって噂アル。ま、噂は噂・・・」
「ああ、それホント」
「ですよねぇ・・・って、ええぇぇ!!!!」
耳がきーんとなり、指で塞ぐと泣きそうな顔で見つめられた。徐に指を耳から離し、何でそんなに驚くの、と返す。
その質問に、二人が目を点にした。顔を見合わせ、どちらが言うか相談するように視線交わす。
この二人出来てるんじゃないの、なんて思うけどそれはないな。ペアルックしてる姿を想像出来ないし、個人的に嫌だし。
「あんなやつのどこがいい、って話ネ」
「え、土方さんにいいとこなんてあったの」
言った途端、教室の入り口辺りから派手なくしゃみが聞こえてきた。案の定それは土方さんで、鼻を擦る姿はじいちゃんと重なる。
なんで、とかどこが、とか問われても困る。別にあたしは好きではない、あんな鳥の巣頭。もっとかっこいい人があたしの好みだ。
「・・・それは言い過ぎですよ。頭だって悪くないし、顔も悪くない、剣道だって凄いじゃないですか。・・・沖田さんには劣りますけど」
「つーか、それならなんで付き合ってるアル?あのヘタレのこと好きじゃねぇんだろ?」
「責任とるんだって」
「何の?」
「キス、の」
「ハァァァァ!?」
二人の奇声に、教室内にいた人が一斉に此方を見る。土方さんも此方を見て、一瞬だけ目が合った。おもいっきり睨みつけて目をそらす。苦笑された気がするけどそんなの気にしない。
「私聞いてないヨ!!お父さんは許しませんっ!!」
「本当ですよ!!・・・というかいつのまに?」
「昨日。・・・放課後に」
続きを、と目を輝かせる二人に渋々昨日の事を話す。




宿題をやろうと、昨日は半年間この学校に通っていて初めて自分から図書室へ行った。授業で来たことはあったけれど、休み時間に使ったことは一度も無かった。読書するなんて、あたしのキャラではないから。
それで、目当ての本を取ってきてさっさと終わらせ帰ろうとしたのだけれど。

眠気に襲われた。

睡眠と勉強のどちらを取るかと言われたら、世界中の約八割が睡眠をとるだろう。
というのはあたしの持論だけれど。


目が覚めたのは、唇に何か触れたからだ。
目を開けて顔を上げると、夕暮れをバックにボサボサ頭が立っていた。
「何、したの」
「別に」
あきらかに戸惑ったような顔をしてる。隠し事が苦手だ、この人は。それは昔からそうで、中学の時からよく悪戯したり、騙したりと色々してもどんな酷いことだろうとあまり怒らなかったのは多分純粋だからなのだろう。見た目からは全然想像できないけど。
「・・・嘘つきは舌を抜かれるべきですよ。抜いてあげようか?」
「止めてくれ。ってか何で分かるんだよ。餓鬼の頃から嘘ついたら絶対ばれるよな」
「そりゃあ、土方さんが嘘つくの苦手だからでしょう。だから正直に言って」
さぁ、と促すと困ったように頬を掻く。
「・・・キスしただけ、」
反射的に投げた辞書が顔面に見事命中した。顔面押さえしゃがみこむ彼の前に立つ。殴りたい衝動にかられるけどなんとか堪える。
ありえない。寝込み襲うなんて腐った男のすることだ。元から腐ってるのは知ってたけど、ここまでとは知らなかった。
「警察に引き渡しましょうか?」
「ごめんなさい・・・」
「・・・どう責任取んの、腐った綿菓子」
漸く顔を上げた土方さんの鼻が赤くなっていて、以外と鼻が高かったのかと今更知った。
というか酔っ払いみたいだ。
「綿菓子ってこの髪型のこと?酷くないか、それ」
「酷い?それはあんたでしょ」
「責任取るし、ちゃんと。・・・付き合おう」
「はぁ・・・?」
責任取る為だけに付き合うのかよ。
そう言おうと思ったけれど、宿題をまだやっていなかったことを思い出した。早く終わらせなきゃ。
別に付き合うったって何か特別なことするわけじゃないだろう。
それにこんなのと付き合ってやろうというボランティア精神に満ち溢れた人も、いなさそうだ。
しょうがない、妥協して首をたてにふる。
「はいはい、別にいいよ。それじゃあまた明日」
「・・・おう」
とっとと帰れと思ったのが通じたのか、颯爽と鼻を押さえながら図書室を出て行った。




「・・・という感じ?」
「沖田さんってボランティア好きなんですね」
「本当ヨー。私アレと付き合うなんて嫌アル」
「あたしだって。でも責任取るって言われてしょうがなく、あのモヤシと・・・」
「モヤシって何、俺のこと?」
「あ、土方。ココア買ってきて~」
「何で呼び捨て?しかも無視?ってか俺の話してたんだろ。地味に喜んでいい」
「気持ち悪いから喜ぶならあたしの視界の外でお願いします」
ガッツポーズしながら小銭を握り、教室を出てく後ろ姿を眺め溜め息をはく。
「・・・なんか鬼嫁みたいネ」
「いいようにあしらってますね」
「幼馴染みだし扱いは簡単な人だしね」
再び聞こえた小さなくしゃみは遠くからで、それさえ聞き分けてしまう自分の耳が嫌になる。

素直じゃない、なんて誰かに言われなくても分かってる。それでも、素直になるなんてきっと無理だから。
どうか、きっかけを。





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