カラオケ行きたいです。音痴だけど、熱唱したい。ラルクとCOCCOとアリプロと……。
そういえば明日は雛祭りですね。私の家では藤娘と三段飾りが仲良く並べられておりますが、七段とか半端なく場所とりそうですよね。二、三畳分ぐらい?うちの風呂場より面積ありそうですよ。うちの風呂場は狭いですから……。
それじゃ、チャレンジしてみたるろ剣の宗次郎。
夕されば 門田の稲葉 おとづれて
蘆のまろやに 秋風ぞ吹く
飄風
きっときっと僕は、これから多くの事を知って、多くの者を殺めるのだろう。
赤く異様な形をした物が、風になびきカラカラカラ………と回っていた。いつか見た、自分と同い年ぐらいの男の子が、同じような物を持って走り回っていたのをぼんやりと思い出した。
これは何なのだろう?
クルクル回っているそれをじぃっと見つめていると、段々と平衡感覚が失われていくようだった。
(あっ、転ぶ。)
そう思い身構えるが衝撃はいつまで立ってもなくて、代わりに背中に何かが当たった。
何だろう。疑問を抱きながら振り返ると、ぶつかったのは自分が知っている人間だった。
帰るのが遅くなってしまったから、迎えに来てくれたのだろうか?
「どうかしたか?」
「…これ何ですか? 志々雄さん」
未だに回り続ける物を指差し尋ねると、彼はフッと口角を上げたようだった。闇夜だからよくは見えないけれど。
こんな夜は、彼によく似合うと思う。一切、光が無い暗闇は彼の魅力を引き立てるのだ。
強く真っ直ぐな心を。
どこかの家に立掛けられていたそれを、容易に手に取り、志々雄さんは僕にそれを渡す。
「“風車”だ」
「かざぐるま……」
クルクル回る赤は血のようにも見えて、綺麗とは少し言い難い。けれど、何故か見ていて飽きないのだ。
行くぞ、と声を掛けられて風車から目を離すと、さっきまで自分の真後ろにあった人影は既に歩き始めていた。
「お団子おいしいかぃ?」
「ええ。とっても」
あれは真夏の夜のことだったろうか。
目の前を風車を持った楽しそうな子どもが通り過ぎて懐かしいなァ、と郷愁が胸を覆う。あの風車はいつの間にか無くなってしまっていて、あれから風車はあまり目にしていなかった。それ程気に止めていなかったのに、懐かしいと思うのは少しおかしいような気もするけれど。
「ごちそうさまでした」
「また来てねぇ。あぁ、そうだ。こんな物いらないかもしれないけど…」
「……風車、ですか?」
「うちのじいちゃんが作り出したのよ。それでこれが第一作でね。不格好なんだけど…」
「ありがとうございます。それじゃあ、」
血のように濃い赤。暗闇で見たらもっとあの色に酷似しているのだろう。
あの頃から、自分は成長したのだろうか?
なんとなく、成長してないような気がする。身長とか伸びたし、剣の腕も強くなったけれど、それ以外は何も。
「宗次郎」
「あっ、志々雄さん。美味しいお団子買って来ましたよ」
そよそよと秋の冷たくなってきた風に風車が不規則に回る。それを片手で持ち、もう片方の手で買ってきた団子を目の前に掲げる。
赤い風車を見て志々雄さんはいつかのように口角を上げ、室内に入っていった。
─────これから先も、この背中についていくのだ。この人が、僕の信念だから。
#71
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