「餓鬼が産まれたら・・・」
「えっ?」
ボソッと聞こえた声に振り返る。カツン、と右足から放たれた小石が見事俺の踵に当たった。素晴らしき命中力。今日の保体でやったサッカーもかなり上手だった。見方チームでよかった、と思う反面、やりあってみたかったとも思う。けど、必ず一回は俺にボールをぶつけてくるだろう。ギリギリ避けれるか避けられない程の速さで。
「アンタ、餓鬼が出来たら“パパでちゅよ~”とか言いそう」
また、踵に小石が当たった。角があるものなのによく命中させる事が出来る。当たるように計算しているのだろうか。そういう計算だの努力を勉強に回せばいいのに。
「何だよそれ」
「人格変わりそう」
「・・・いや、ねぇよそんなの。親馬鹿になんかなんねぇだろ、キャラ的に」
「どうでしょう」
再び歩き出すと一定の距離を保ちついてくる。歩く度に踵に小石が当たるのは砂利道だから仕方がないといえば仕方がないのだが。意思を持って当てられているからそれなりに痛い。
それにしても、親馬鹿になる、って。想像しているのか後ろで総悟は笑っているが、それ以前に。どう考えてもありえないだろう。俺が親馬鹿になる?ないない。ありえない。絶対子どもの相手はしない。帰ってくるのは子どもが寝た後。いつも貴方は私達を放って・・・って離婚届けを渡されるぐらい相手をしないと思う。流石にそれは不味いか。休日にはちゃんとディズニーランドに連れて行って・・・。
「―――――ってチャイナに言われやした」
「え?」
あ、なんだ俺の事じゃないのかと一安心。でも、総悟が“パパでちゅよ~”とか言うとは思えない。どっちかってぇと・・・逆吊りにでもしそうで恐ろしい。
「でも俺はアンタのほうが似合うと思いやす」
「いや、似合わねぇから」
一蹴して、思う。そんなこと言うとは、チャイナ娘は総悟の事が?
「お前好かれてんじゃね?アイツに」
「ハァ?そんな訳ねぇですよ。アイツ俺の事嫌いつってやしたし」
「にぶいな、お前・・・」
「えっ?」
きょとんと首を傾げる総悟に、ハァ、と溜め息を一つついた。