「トシィ~。こっちだ」
近藤さんに呼ばれ向かったのはいつも使ってる小さめなスタジオではなくて、有名なモデルとかが使ってる中々大きめなスタジオ。
って自分もマネージャーがついたんだし結構有名になったのか。
ma cherie
デビューといえばいいのか、とりあえず初めて粧し込んでカメラの前に立ってから四年がたった。
社長がいうには中々早い出世らしい。この世界で出世とかあるのか。とは思ったが雑誌の表紙を飾るようになったらそれは大きな一歩らしく、カメラマンは専属になるしマネはつくしスタジオは大きくなる。嬉しいっちゃ嬉しいが。
専属、っつうのはいいが、相性が最悪だったら面倒だ。マネは同級生だった近藤さんがいつのまにかなってくれてはいたが。
そんな考えが顔に出ていたのか、近藤は宥めるように話しかけた。
「トシ、安心しろ。写真とる奴はな、俺の知り合いで大学の後輩だった奴だ。」
・・・近藤さんがそう言うのなら平気だろう。多分。何せ人柄がどんなに悪くても近藤にとってはいいヤツ、なのである。たまに土方には解せない者もいるが、其処は近藤の手前愛想笑いを浮かべる。
さぁ、今回はあたりか外れか――――。半ば祈りながら鉄製の重い扉をあけた。
コードなどが犇めきあっている床から目線をじょじょにあげていくと・・。
ドキッ
・・・え?ちょっと待てや。いま、どきっつった?俺の胸どきっつった?やばくねぇか?そりゃあ相手の見た目はいいがよ、
男だぞ?
そこにいたのは骨董人形のような見た目をした青年、いや少年かもしれない。目は硝子玉のように大きく、輪郭は成長期の終わりを告げているかのようなまるみを帯びていてあどけなさを醸し出しているいるが、顔つきは大人っぽい。
近藤さんの後輩、っつっても高校生にしか見えない。童顔、なのだろうか。
「自己紹介、するか。二人とも」
近藤の顔を見上げると、目で、まず先にトシな。と言われ、あまり好きではない自己紹介をする。
自己紹介などせずとも、これから先仲良くやっていかねばならぬのだ。そのうちわかるだろう。というのが十四郎の持論だ。
「芸名はトシだ。本名は―――」
「土方十四郎。中学、高校と成績トップ。スポーツはできるし、頭もよく顔もいい。ってことで女にもモテモテ。で高校生んとき進路に迷ってたらここの社長にスカウトされてモデルに。ファンクラブには一万人もの人が入ってる――――ざっとこんなもんで?」
・・すごい。もててたかはしらないが大体合ってる。ってかファンクラブなんかあったのか。
「俺は沖田総悟。アンタか俺か・・・どっちかが引退するまでの間、よろしく頼みまさぁ」
「・・よろしく」
引退、か・・。俺は一体いつまでこの仕事をして、この仕事で食ってくのだろうか。
「トシ」
やばい。考えこんでいた。仕事中にも関わらず。プロ失格だ。
「悪ィ」
頬を叩いて気を引き締める。その様子を見てか、沖田はクスリと笑った。
「・・・?」
「土方さん、ナマで見ると可愛いですねィ」
「ハァァァァ!?」
気を引き締めたにも関わらず、今度は奇声を上げてしまった。
タイトルは「マシェリ」と読んだきがします。