この間打ち終えて・・・UPするの、忘れてましたよね?コレ。ダブってたらすみません。
ふと、思い出した事がある。遠い昔、とは言えども餓鬼の頃の事だが、姉貴がよく言っていた台詞を。
―――――口付けただけで相手の気持ちがわかるようになるのよ。あなたが本当にその人の事が好きで、相手も同等、もしくはそれ以上の気持ちを返してくれているのなら、ね―――――
それが“運命の相手”なんだと、言っていた。
そう考えると、総悟がキス魔なのは、その“運命の相手”とやらを探しているから――――と思えてくるのだが。まぁ、そんな訳はないけれど。
―――――アイツの気持ちは、痛い程伝わってきている。
じゃあ、俺の気持ちは?
Ma cherie 第十八話
「・・・いい加減離れろ。総悟」
「やでさァ」
総悟がさっきから、しがみ付いて離れない。なんとかスタジオまでは行けたのだが、カメラマンがこれじゃあ撮影はいつまでたっても始まらない&終わらない。
「ほら総悟。終わってから抱きつけばいいだろ?」
「・・・でも、今抱きつきたいんでさァ」
「・・んな事やってっと嫌われんぞ?」
いままでも、しょっちゅうこういう事されてきていたが、近藤が知る由もない。
「・・・まぁ、しょうがねぇですねィ」
が、総悟は最もあっさり離れた。鶴の一声ならぬ近藤さんの一声か、と楽観的に考えていると、近藤さんには聞こえないよう、俺の耳元に囁いた。
「後でたっぷりいちゃつかせてもらいまさァ」
「・・・なっ!?」
「さぁ近藤さん!頑張りますぜ!」
「よし、その意気だ!」
何故近藤さんは、素でこんな悪乗りできるのだろう。天然、とはこうも心臓に悪い・・・というか腹黒く感じるものだっただろうか。
―――――総悟に合わせてしまうから、黒くなるのか。
とは言っても、別にそこまで近藤さんが黒い、という訳ではなくて。ただ悪乗りしてるから黒く感じる訳で。だからって別にそこまで黒く感じるんじゃなくて、総悟をサポートしてるみたいな。
って訳わかんなくなってきた。
「土方さん、こっちは準備完了でさァ」
「え?・・・ああ」
やっぱ、コイツの所為で身の回りの世界が狂った気がする。
――――――狂ったのは、かわったのは、俺か。
カシャ、という独特の音とともに一瞬だけ光が舞う。
眩しくて、残像が焼き尽く。
向こう側から此方側は見えるけど、その逆は決して見えない。
レンズの向こう側で、いま彼はどんな顔で、どんな事を思っているのだろう。
「今日の土方さん・・・最高でさァ」
考えてる事が筒抜けかと思うようなタイミングで、カメラの横から顔を覗かせた。
眩しいくらいの笑顔で。
「色気がすげぇでさァ。恋煩いしてるみてぇ」
「何言ってんだ?おまえ」
言ってることが可笑しくて、つい笑ってしまった。その顔も、総悟は隙を逃さず、といった風にカメラに収めた。
「とんなよ。これは営業用じゃねぇんだから」
「個人用でさァ。アンタの笑顔なんざそうそう拝めやせんからねィ」
――――ほんの一瞬だけ、総悟の為ならいくらでも笑ってやれる・・・と、そう思ってしまった。
「土方さん?どうかしやした?」
「別に。続けるぞ」
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