管理人・白野 識月<シラノ シキ>の暴走度90%の日記です。 お越しのさい、コメントしてくださると嬉しいです。
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恵方巻き食べました。
直径15cmぐらいのを。鮪のだったのですが、結構飽きました。三口食べた辺りで。やっぱり安くても普通のがいいですよ。


さてさて。
いよいよ明日、前期選抜合格発表です。
まだ緊張してません。今日もまたゲームしてましたから。でもなー。受かってるかな?落ちてたらどーしよ。いや、落ちる確率の方が高い。
…………テストの点数どうなんだろ。



それでは節分ネタです。
うわ~緊張してきた……。












これやこの 行くも帰るも 別れては
知るも知らぬも 逢坂の関





鬼の微笑





「ひっじかったさーん」

呼ばれて振り返れば、満面の笑みを顔に浮かべた沖田が縁側を走って来ていた。

嫌な予感がする。

慌てて去ろうとするが、時既に遅し。背中を向けた途端、後頭部や背中に無数の痛みを感じた。
地味に、痛い。堪ったストレスが爆発する痛さだ。

「っにしやがんだてめぇっ!!」

「背を向けて逃げるあんたが悪いんでさァ」

「逃げてなんざねぇだろ!!」

ただ、普通に歩いただけだと言っても沖田は聞かないだろう。常日頃の経験からそれはよく分かっている。
子どもの頃から変わっていない、そんな我が儘で自分の思い通りに事を進めようとする純粋な気持ちが、土方には懐かしくて羨ましい。
世間一般の“大人”じゃそんなことは出来ない。
“正義”を掲げ堂々と悪事を行う奴らが沢山いすぎて、綺麗なままじゃこの世の中を生きていけない。だからこそ、一年、十年後も今のままの無邪気さを失わないでいて欲しい。
そう土方や近藤が思っているからこそ、沖田は甘やかされていると皆から言われるのだが本人たちは聞きもしなければ気付きもしない。

「まァ、いいから相手しなせぇよ。どうせ、あんた今日非番だろィ? 豆撒きくれぇ」

「豆撒き…? 今日は節分か?」

「あんた毎日カレンダー見てるくせに気付かなかったんで? あんたのかあちゃん何人だ?」

どこかのアイドルの曲のタイトルを、からかう口調で沖田は口にした。
その途端どこからともなく豆が山盛りにされた升を持ち山崎が現れた。そういや、あのアイドルのファンだったなと思い至る。

「副長が人間なはずないですよっ!! 人間なら、あんな気持悪い程マヨネーズ……」

「オイ山崎、何か言ったか」

「いえ……」

「ってか何でお前も豆持ってんだ…」

豆撒きの準備万端な二人を前にし、何でこうもノリノリなんだこいつらと疲れを感じる。
文化を大切にするのはいい。正月、節分だとかいった風習を行うのは悪いことではない。
だがしかし、と土方は思うのである。
沖田が尊んだり楽しんだり率先して取り組む行事は、必ずといっても過言ではない程土方は被害を被る。
例えば、バレンタインである。何年前かは忘れたが兎角、土方は沖田から『日頃の感謝』と言われチョコを受け取った。土方は感動した。『こいつにも、感謝の気持ちが芽生えたのだ』とそう思った。
だが、食べてみたら酷かった。強力な下剤入りだったのだ。油断をしていたわけではない。が、“沖田から貰った”物を食べてしまったのは自分だ。沖田を責めても、『油断した方がいけねぇや』とかケロッと言いそうだと、文句も言わず便所に閉じ籠った。
あれから何年か経ったがそれでも俺も総悟も成長していない。

「近藤さんに提案したら快く了承してくれやした。だからいいだろィ? 鬼が豆投げつけられんのは当たり前ですぜ」

「鬼じゃねぇっつーの!! だからいい加減止めてくんない!? てめー、ただ単に俺に豆投げつけて楽しみてぇだけだろっ!!」

「勿論、そうでさァ」

賞賛したいまでに颯爽と言い切られ、予想通りではあるが、溜め息を吐かずにはいられない。
ここまで自己中な人間になれれば、何も苦労は無いのだけれど。

「ほら、泣いて逃げなせぇよ」

「誰が泣くか」

投げられる豆を避けながら、後始末の事を考える。山崎が全部片付けるにしても、あいつは効率が悪い。沖田に手伝わせたくとも、やらないのは目に見えている。結果的に自分が片付ける羽目になりそうだ。

「山崎も、日頃の恨みを豆にこめなせぇよ」

「…倍返しにされそうなんで嫌ですよ」

豆を掴んだまま話だした二人に向かい、土方は突進した。
投げつけられた豆を拾い握り締めて。

「……沖田さん、鬼が此方来てますよ」

「え? あら本当でさァ。鬼が追い掛けてきちゃ駄目じゃないですか」

「ダメじゃねぇよ!! やられっぱなしでいられっかっての!!」

「山崎、逃げながら豆投げやすぜ!!」

「え…えぇ」

「待てコラッ……!!!!」




近藤が飲み物欲しさに温い自室から出て山崎を探していると豆だらけの縁側で三人が死体のように転がっていた。

「おっ、豆撒き終わっちまったか。………にしてもお前ら本当仲良いな」

疲労をたっぷり顔に浮かべ、力なく横たわる三人組が近藤の目にはそう映るらしい。

「仲…良く………なんか……してねぇよ………」

「ほんと…でさ……。…マジ疲れた…」

肩で息をしつつ答える二人をガハハと豪快に笑いとばし、近藤は床に転がる豆を一粒口に含んだ。
それ、汚いんでは?と山崎は言おうと思ったが呼吸もやっとなほど疲れていて声も絞り出す事が出来ない。

「よし、豆食うぞ豆!! 皆ちゃんと拾えよ~。あっ、歳の数しか食っちゃ駄目だからな」

「拾えねぇ………ってか立つのも無理………」

「立て……立つんだ土方…。俺の分も豆を拾いやがれ」

「てめぇの方が若いだろ……」

「ほら、ちゃんと拾えよ!! 食べちまうぞ?」

一人で喜々として豆を拾う近藤に土方は溜め息を溢した。





#10
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行って参りました、願書提出。いや、疲れた。約一時間並んでました。ぼーっと、寒いなとか思いながら。
受かれれば、いいのですけどね。
どうなるかは神のみぞ知る。私は努力をするだけです。頑張るぞー!


それでは、季節感ゼロな沖楽。スランプ気味。














自分と同い年だと分かっていたのだけどその背中が酷く小さく見えたのを覚えてる。
ありふれた、始まりの挿話。





雲路の果て





「私、お日様に当たったら死んじゃうアル」

初めてその事を告げた当時から、彼はひねくれていて生意気で我が道を行く子どもだった。

第一印象は良かった。
見た目はどちらかというと整った部類に入っていたし、男の子にしても少し大きめな瞳はこの世界への好奇心が渦巻いていたけれど冷めてもいた。要するに、今まで見た事のあるどの子どもとも違っていた。
変なヤツだったのだ、当時から。

今になって冷静に考えてみる。
ヤツの性格からして、絶対に馬鹿にする非現実的な自己申告だった。
それなのに、馬鹿にせず、彼はこう言ったのだ。

「・・・それって吸血鬼みたくてかっこよくねぇですかィ?」

危うく日傘を落とすかと思った。危ない危ない。真っ白な病院にまた缶詰にされるとこだった。こんなに驚いたのは初めてかもしれない。自分がこういう病気だと聞かされても、驚かなかったから。

そんなコト言われたの、初めてだった。

かっこいい、だなんて。青い空の下、泳ぐことも運動会することさえも出来ないのに。

吸血鬼みたいっていうのは、少しあの頃から大人になった今の私からしては嬉しくないけど、それでも当時は嬉しかった。

「かっこいいアルカ?」

「だって、それってお前が“とくべつ”ってことだろィ?」

「とくべつ・・・」

酷く新鮮な考え方だった。
あのとき、もしも総悟に会っていなかったら、未だこの病に縛られたままだっただろう。


なんで私だけ?


なんで皆は元気なの?


なんでこんな目にあわなきゃならない?


私は何もしてないのに


いつもいつも、胸に渦巻いていた。町を行く人皆に嫉妬していた。恨んでさえもいた。

そんな醜い気持ちを一蹴してくれたあの言葉は、あいつは、私の中にいつもあり続けている。




「か~ぐ~ら~」

相も変わらず丸い双眼が、じぃっと私の姿を写す。

そんな目を、されたって。

「冷えピタはやらないネ。風邪引いてる私だけの特権アル」

「特権、ねェ・・・。夏風邪は馬鹿だけが引くんですぜ? 馬鹿にそんな大層なモン必要ねぇだろィ。こちとら暑さに脳味噌やられそうなんでィ。とっとと渡しな」

ベッドに頭を乗せ機嫌の悪そうな表情で私の額にある冷えピタを取ろうと手を伸ばす。
その手をパンと払おうするが、あまりの暑さに動く気力も萎え、振り上げた手の力を抜く。重力に従い落ちる腕が運よく沖田の手に当たった。
その衝撃に頭の螺子が吹っ飛んだのか、何の脈略もないことを、彼は口にした。

「・・・吸血鬼って風邪引くか?」

「・・・風邪引いてる人の血を吸ったらなるアル。多分」

「ふ~ん・・・」

自分が聞いてきた癖にその、気のない返事は何だと思う。苦情を言う気も、暑さで失せるから言わないけれど。

暑いのなら自分家で涼めばいいのに。扇風機独り占めにしてアイスでもかじってればいい。

「帰りやすかねィ」

「さっさと帰るヨロシ」

帰ってほしくはない。それでも、この口は憎まれ口しか叩かない。素直な言葉を言える、性格でもないし。

いつ帰るのだろうかと待ってみるけれどいつまでも帰る気配はない。というか逆に、目を瞑り眠る準備をし始めた。

「おい、寝るなヨ・・・」

「・・・・・・・・・」

病人を見舞いに来といて寝る、ってどれだけ図太い神経してんだヨ。
暑い暑いとわめいていたのに涼しい顔したまま眠る沖田に文句を言おうとし、また止める。
起こしたくないと思った。たまには、寝顔でも拝ませてもらおうかと。いつもいつも、私が寝てる間に来て勝手にひとの寝顔見といてぶっさいくだなァとぼやきやがるから。
だから、決して親切心から思ってるわけじゃない。
だけど安らいでいる寝顔を見て不覚にも心臓がきゅんとなってしまった。


これはもう、重症だ。


それを肯定するように、風鈴がチリンと鳴いた。
昨日言ってた、巫女さんと立花さんが出てくる浅見光彦シリーズの名前思い出しました。戸隠伝説殺人事件です。
あ~。すごくすっきりした。


それでは野球ネタの二話目。一話をアップしたか忘れましたが。














眩しい夏の景色はあっという間に過ぎて、寂しい冬も風に吹かれて過ぎてった。
春が来たら俺の手元から何もかもが消えていた。





SIGNAL





一陣の風が青く茂る木を揺らした。サワサワと篭れ日がざわめき動き、目が少しチカチカする。
手元に何かが当たって視線をそっちに移すとあの人がくれたグローブだった。


─────楽しくなかったわけでは、ない。


俺が、試合で投げて完封勝利したと告げる度に姉上は笑顔で喜んでくれてたし、日々、色んな投げ方を教わって皆と練習するのはとても満ち足りていた。

でも、それも去年の冬までのこと。

「・・・・・・マウンドに、立つ度・・・ある人を思い出すんでさァ」

「ある人?」

「前に組んでたキャッチャーなんですけどねィ、あんたに被って見えて。・・・だから、あそこに立つのは好きじゃない。野球自体は好きですけどね、勿論」

「ふ~ん・・・」

軽い相槌を打ちながらも、目は続きを促す。
別に、俺の野球の始まりとか聞いても意味無いだろうと思うけれど、一歩も譲る気が無さそうで渋々、どう話そうか考える。

「・・・そのキャッチャーのこと話せばいいですかィ?」

「いや、全部ききてーなァ」

面倒くさいな、と溜め息を吐くと小さく笑われ、「話してくれたら甘味奢ってやるよ」と仕方がなさそうにそう言われ少し機嫌がよくなる。


─────全ての始まりは二年前。


「土方、って言うんですけどねィ、そのキャッチャー。そいつと俺と近藤さんは、幼馴染みってぇのかな。兎に角餓鬼の頃からよくつるんでたんでさァ。中学入ってからも、同じ委員会に入ってたんですけどねィ、部活だけ、別々だったんでさァ。俺が帰宅部で土方さんと近藤さんは野球部」

「・・・最初から入って無かったのか?」

「ええ。うちビンボーでしたし、姉上が少し病弱でして。留守中に何かあったら困るし部活とか面倒だし入らなかったんでさァ」

「へぇ・・・」

「・・・んで、中二の梅雨ぐらいかな。ちょうど今ぐらいの季節でこんな天気の、少し蒸し暑い日に、土方さんと帰ってたんですけど、あの人昇降口出た辺りで忘れ物したって言って荷物置いて取りに引き返しちまったんでさァ。・・・そんで、」


暇だった。
ほんの少しでも蒸し暑いのは昔から苦手で、じぃっとしてるとストレスで死ねるをじゃないか、そう思うぐらいだった。
何かして気を紛らわそうと思い、辺りを見回したらちょうど土方さんのボールとグローブが目についた。
流石に昇降口の真横で壁当ては危ないかと思い、少し裏に回ったところの壁に思いきりボールを投げつけた。バコォンと音を反響させ校舎に球をぶつけるのが意外と楽しくて、何度も繰り返して投げていたけど、やはり、飽きがくる。
そこで、“違う投げ方”にチャレンジしてみようと閃いた。

土日に試合があると必ず、土方さんに試合を観に来いっつわれてて、渋々毎回姉上と応援しに行っていた。それで、その時はまだピッチャーだった土方さんをよく見ていた。三年を押し退けてピッチャーの座についただけはある、見事な投球フォーム。カーブを得意とする土方さんはよくそれを使っていた。

見よう見まねで投げれるか。

ほんの興味を胸に、ボールの持ち方を変えてみる。
一呼吸して、ボールを壁に投げつけた。

─────俺の手から離れたそれは、綺麗な弧を描き壁にぶつかる。

これは、成功としかいいようがない。
意外と簡単じゃねぇか。こんなん得意ってそりゃ当たり前だろ。土方さんってやっぱ馬鹿だ。
再び投げようとした刹那、背後から声が聞こえた。

「おい、そこの嬢ちゃん」

背後から聞こえた声に振り返る。声の主は野球部の顧問をやっている生活指導の松平。
辺りを見回すが、俺と、そのおっさん以外誰もいない。

「嬢ちゃんって俺のことですかィ?」

「おう、そうだ。ちょっとおじちゃんについておいで~。大丈夫、変なことしないから」

「見るからに胡散臭いですけどねィ、あんた」

この先生がスケベな事はこの学校では有名だ。それに仕事は適度に手を抜いてるけれどいい先生なのだと土方さんからも聞いたことがある。
俺はこの人と会話した事がないから本当かどうかわからないけれど。

「お前野球やったほうがいいって。才能あるからよ。ちょっと時間くれな」

「なっ・・・!! 勝手に決めねぇでくだせェ!!」

「文句言ってんじゃねぇよ~。おじさんに逆らったら退学にするぞ?」

「そんな権限持ってねぇくせに。第一、俺は土方さん待って・・・」

「土方ならさっきからそこにいんぞ」

えっ。
と振り返れば、壁に寄りかかるようにして土方さんは立っていた。いつにも増しての無表情。
居たのなら言えばよかったのに。そうすりゃ、俺はこの人に捕まらずに済んだのに。馬鹿土方はどこまでも果てしなく馬鹿だ。

「じゃ、荷物持ってこい、土方。お前のポジション変えんぞ」

「はぁ!?何勝手なこと言ってんだよアンタ」

憤慨する土方さんを放り、松平はずんずん歩みを進める。

─────結局その日俺はピッチャーの座に無理矢理つかされ、土方さんはキャッチャーになった。
近藤さんは前からしつこく勧誘してきていたから、俺の入部、そしてピッチャーになったことを喜んでいた。
土方さんも、俺を目の敵にしたような態度をとっていたけれど、確かに喜んでくれていた。俺らは“ピッチャー”と“キャッチャー”である依然に餓鬼の頃からつるんでいたから直感的にわかった。

姉上も皆、幸せだったのに。


全てを狂わせた。



「・・・その日から土方さんと猛特訓して、三日後の試合で見事完封勝利をしたんでさァ。俺らのチーム」

「・・・すげぇな、お前。才能があってもその才能を活かせる奴なんてそういねぇよ。ついてんだな」

「そうですかねィ?」

運が良いのかもしれない。けれど、野球さえしてなければこんな理不尽な思い、胸に抱くことなんか無かったのに。馬鹿みたいにあの人との別れに執着し続けることなんて無かったのに。
結局のところ俺は運が良いわけじゃないんだ、全然。

「で、続きは?」

「言いやせんよ。あんたどうせ金あんま持ってねぇんだろィ? 甘味一品じゃ割が合わねぇや」

「しゃあねぇな・・・」

ぶつぶつと小言を耳に受けながら立ち上がる。
長話しすぎたようで見物してた人々はとっくに自分の練習に戻っていた。

「・・・よし、やりやすよ!」

旦那に話したことで、何故か知らないが胸がスゥッとした。
これからはもうちょっと真面目に野球に向き合えそうな、そんな気がする。
明日の夕方5時から何を放送するのでしょう。気になる。
今日、五軒からお年玉もらいました&自宅に帰ってきました。年賀状が13枚きていました。すごい不吉。







それでは、片想いだけど一応危ない部類に入るかもしれない百人一首。健全な意味でとらえましょう。全てを。











筑波嶺の 峰より落つる みなの川
恋ぞつもりて 淵となりぬる





Appassionato





魅せられて

引きずりこまれて

身動きひとつできやしない

─────君がこの腕に飛込んできてくれたのなら






窓の外を見渡せば、青空の下には綺麗な白い山々が連なっていて、どこかの屋敷に飾ってある絵画のようだ。点々と散らばる薄墨色の雲が、完璧な冬の景色の調和を乱している。
そんな様子を表したような、荒々しく短調を奏でるバイオリンの音が冷めた空気を伝わり空気をより張りつめた物にする。

いつもは、優雅に繊細に音を奏でる指先が、激しく波打つ嵐の海のように余裕なさげに音を形にする。

「・・・またかよ」

「放っといて、くだせェ」

口調には露骨な変化は無いが、音色と表情が剣呑としている。

だからといって、耳障りな音では無いのが不思議だ。
普通、他の演奏者がこういう不の感情を抱きつつ楽器に向かった場合、どんなに有名で技巧的な演奏者だろうと音は悪くなる。


それなのに、こいつは。

逆にそれを利用し情熱的な曲をより情熱的に弾く。誰もが経験するスランプを、こいつはものともせずに毎日毎日バイオリンを奏で過ごす。どんなに練習したってこんなこと出来やしない。これこそ本物の“才能”なのだろう。

「・・・いい加減にしろ」

「あんたに指図されるようなコトじゃありやせん」

「音が、変わんだよ。お前の機嫌が悪いと」

室内を満たしていた音楽がぴたりと止む。

両手を下ろし、窓の外をぼんやりと視界に写し、躊躇いながら呟いた。

「やっぱ・・・音、ダメになってやすかィ? 自分じゃ分かんねぇものですねィ・・・全く」

しゅん、と先程までの演奏とはうってかわり、落ち込んだように頭を垂れ、椅子に無造作に座り込んだ。

ここで、音が悪くなったわけじゃない。と言えば、こいつは再び弾き始めるだろう。この世の不条理に対しての苛立ちを音にのせて。
けれどそれじゃあ“演奏家”としてのこいつを甘やかして、何も教えないでいるのと一緒だ。演奏に私情は要らないのだと、きちんと言わなければならない。いつでも、どんな時でも、繊細な音を出せるように。


もっともっと、いい音を奏でられる。総悟ならば。


それを聞きたくて、手元に置いてる。それなのに。

「音が悪くなったんじゃねぇよ。・・・そりゃあ、いつもとは少し違うけどよ」

「本当ですかィ!? ・・・よかった・・・・・・」

安心したように顔を上げ、微笑み、バイオリンを膝の上に置いた。慈しむように、それを撫でる。


音楽に通ずる者として、総悟の奏でる音に、総悟自身に惚れ込んだ。
こんなにも透き通るような音色を、奏でられる者は他にいない。けれど、総悟にならもっと澄んだ音を出せるし様々なテクニックをこなせるだろうと、そう見込んでこいつ専属の“先生”になった。

一応、これでもファンがいるぐらいは演奏家としてやっていけていた。総悟程巧かったわけではないが。・・・だから、もっとテクニックを教えてやろうと思ったのだろう。金にならない、こんなことをしているのだから。

それなのに、こいつは。
脇目もふらずただ一人を見ている。

「・・・また振られたんだろ」

「ふられてなんか。好きっつっていやせんもん、俺」

またあの人がどこぞの女のケツでも追い掛けてる場面でも目撃したのだろう。あの人の前ではどんなに気丈に振る舞っていても、こうして音に出てしまっていては、いつかあの人にもばれてしまいそうなものだ。・・・だが、近藤さんは鈍感だからあり得ないのか。

「・・・自分の音をしっかり持て」

「あんたはそういうくせに、近藤さんの事を諦めろって言う。それは矛盾ですぜ」

“矛盾”なんかしていない。周りに振り回されない強い精神力さえ持てればいいのだ。それと、大衆に自分の音を聞かせようとする、技巧を上達させる為の努力と目標と。


─────別に、俺にさえ聞かせてくれればそれだけで、いい。

ただのエゴイズムなのだとわかっている。もっと広い世界にとびたたせる為、といういくら大層な理由を並べて手元に引き留めておいたって、本心はただ離したくないだけだ。

「・・・・・・俺は、近藤さんさえ俺の演奏を好いてくれりゃあいいんでさァ」

誰か一人のためだけなんて。

この世界じゃ通用しない。大勢の人に聞かせて、認められなければならない。
これ程の技術があるのなら。
自己満足では済まされない。

「俺は・・・お前の音を良くする為に此処にいる。その気がねぇなら、・・・近藤さんだけが認めてくれりゃあいいと思ってんなら、もう来なくていい」

「・・・・・・すいやせん」


“好きだ”

と言えたのなら、もっと甘やかせていたのなら、少しでも俺をみてくれていたのだろうか。





#13
あけますねおめでとうございます。

大晦日な本日、一才の妹と湯船につかっておりましたら小便引っ掛けられました。一番風呂で入ってたら思いもよらぬ事件ですよ。運悪いですね、私・・・。

最近ドラマの再放送がたくさんやっていますね。ごくせんとライアーゲームにはまっておりましたが今日で最終話・・・。来年はのだめが二夜連続でやりますし楽しみです。


って今年の反省したほうがいいですよね。
・・・もっとキリッとした人間でいたかった・・・・・・。あれ?これはただの願望?
・・・そこそこ勉強もしましたし、文章力もそこそこ上昇しましたし平和でいい年でした。
京都で新選組巡りもしましたし。


それでは今年最後の小説です。











田子の浦に うち出でて見れば 白妙の

富士の高嶺に 雪は降りつつ




一升瓶と年越し蕎麦





「あ~、かったるい」

「本当アル・・・・・・ってお前いたアルカ?」

ハァ、と淀んだ気分を更に淀ませる溜め息を吐き、同時に椅子に腰掛けたところで漸く、二人は顔を見合わせ互いの存在に気付いた。
二人の眼前では大の大人が道のど真ん中で壮絶なバトルを繰り広げようとしている。今はまだ、口喧嘩で済んでいるが。

そんな彼等に愛想がつきた二人も、小さな口喧嘩をし始めた。
口喧嘩、というよりも、己がどれだけ不幸か、と語り合っている、と言った方が正しいのだけれど。

「銀ちゃんったらこないだ屋台で呑んで、そのまま寝ちゃったから私と新八で引き取りに行ったアルヨ」

「土方さんなんかあれですぜ。公共の場で犬の餌食いやがって、俺も一緒に追い出されやした」

「それならまだまだいいだろ。私なんかアレ、合コンに一緒に連れて行かれたネ」

「お前、誰にも話ふられなかっただろ」

「そうアル。不思議な世の中アルな~」

なんて、駄菓子屋で買ったラムネをラッパ飲みしつつ、愚痴を言い合う。
勿論、ラムネの代金は路上で喧嘩してる二人の懐から出ている。当の本人らは気付いていないのだけれど。

「・・・てめぇな、マヨを愚弄する気か? 馬鹿にすんな。あの宇治銀時丼とかいうてめーのふざけた食い物以下の物体と一緒にしねぇでくれっか?」

「ハァ? 何お前。宇治銀時丼の良さわかんねぇの? 君それでも人間? あんな黄色い物体死ぬ程食ってる時点で人間じゃねぇな。お前のかあちゃん人間?」

どっちもどっちだろ。
と冷めた目で味覚音痴を眺めていた沖田は、何をしても終止符を打つことが出来ないであろう口論に本日何回目かの溜め息を零した。

巡回の最中に寄り道とかすんなっつうくせに、自分は良いのかよと思う。けれど、そんな小言、このニコチン中毒に言っても無意味なのは分かっているし、多少煮えきらないがいつもこうして待ってしまう。

馬鹿だなァ、俺は。

それでも、今日は一人で待っているわけではないし。

「沖田~、私つまんないヨ。何処か連れてけ」

「・・・デートしてぇ、ってんで?」

「・・・・・・まぁ、そーいう事アル。何でも好きな物奢らせてやるから感謝しろ」

「・・・だから、土方さんの金しかねぇっつーの。・・・しかも、今日あんま持ってねぇし」

今日は、土方さんの財布から1000円ぐらいしかパクってない。その内ラムネに100円使ってしまったから900円しか残ってない。
この金額で、満足な物なんて買える訳がない。
まして、この大食いのチャイナ娘が。

「それでもいいアル。神社行けばいっぱい屋台出てるし、屋台なら結構安いアル」

「・・・屋台・・・? 何で屋台がこんな時期に?」
「お前知らないのか? 今日は大晦日ネ」

・・・あ。
そういえば。すっかり忘れていたが今日は今年最後の日なんだ。
そんな日まで、この大人どもは喧嘩しているのか。たかが犬の餌の話で。

「よし、行くアル行くアル」

腕をぐっと引かれ、無理矢理立ち上がらせられ、引きずるようにして神社に連れていかれる。

なんか、来年もコイツに振り回されそうな気がする。

そんな嫌な予感を抱きつつ、冷たい向かい風に向けて二人して急ぎ足で歩く。






「・・・なぁ、俺らで解決しようとすっから、解決しねぇんだと思わねぇか?」

「俺もちょうどそう思ったよ多串君。こうなったら外野の二人に聞こうぜ」
「上等だ。・・・俺の土方スペシャルのほうが美味いよなァ、総悟」
「そんなことねぇよな。俺の宇治銀時丼の方が最高だよな、神楽」
勢いよく振り返った二人の目に写ったのは、無人のベンチ。

ひとっこ一人、居ない。

「・・・あれ? 総悟?」

「あれ? 神楽?」

途方に暮れ佇む二人を、木枯らしが撫でた。





#4
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