管理人・白野 識月<シラノ シキ>の暴走度90%の日記です。 お越しのさい、コメントしてくださると嬉しいです。
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久々にPCでイラスト描いたんでUPします。一応沖田誕生日記念なので適当にお持ち帰りください。こんなへたなものですが・・・・・・。
やっぱり、線画はスキャンすべきですね皆さん。

小説・・・・・・・・・・・・・できなかったらすみません。
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昨日の夜から母が寝込みました。
母曰く、「緊張の糸がきれた」そうです。私よりも緊張してたみたいですからね。当人より周りの方がざわついているのは不可思議なものです。




それでは、百人一首。
ちょいBLなんで気を付けてくださいな。











忍ぶれど 色に出でにけり 我が恋は
物や思ふと 人の問ふまで





花曇





まず目についたのは綺麗な髪だった。朝の日差しに金色の髪は溶けそうに輝き、春風にサラサラとその髪はなびく。人形のように白く綺麗な
新たな生活に胸を高鳴らせる人々が乗り込む電車、隣に立ったのが天使のような美貌をした学生だった。始め、女だろうとおもったのだが次いで目についた制服に驚いた。その制服は、俺が今年から通う高校から一駅分離れた場所にある、男子校のものだったからだ。
男だと分かっているのに、今日も目で追い掛けてしまっている。

「……おはよう」

「おはようごぜぇやす」

今日もいつものように、俺が乗った駅の次の駅から沖田は三両車に乗り込み、俺の隣の空いた空間に立つ。
三日程前だろうか。沖田が携帯を落とした。これはチャンスだとその携帯を拾ったら案の定、話をすることが出来て、その時に名前をとメアドをゲットした。
男相手に、何してんだよと思わなくはない。でもこれは恋愛感情ではないのだし大丈夫だ、と自分にいい聞かせている。
いい聞かせている時点でもう、自分が沖田をどう思っているのか、本当は気付いているのだが。

「そういや、今月体育祭あるんでさァ」

「此方もある。玉割りとかもあってよ、やる気でねぇ」

「玉割りやんですかィ!? いいじゃねぇですかィ。俺好きなのにやんねぇんですぜ、うちの学校」

すねたように唇を尖らせ沖田は首筋を掻く。
指先まで白くて綺麗だなと見ていたら、人指し指に絆創膏が貼ってあった。
確か昨日は貼っていなかったはず。って俺、このままじゃただの変質者に成り果てるんじゃないだろうか。

「指、どうしたんだ?」

「えっ? ああ。…ちょいと、ね」

ふわりと優しげに細められた瞳は何かに思いを馳せているようだった。

─────まさか、恋人?

有り得ない話ではない。こんなにも綺麗な顔をしているのだから。彼女の一人や二人、いてもおかしくないだろう。
いや、待てよ、沖田は男子校に通っているのだから下手したら男の恋人が………?
考え出したらきりがない。
正直に聞けりゃあいいのだけれど、そこまで親しいわけでもないし、この会話の流れからしても聞くなんて無理だ。

何かいい策はないか、そう考えていると車内アナウンスが流れた。どうやらもう沖田が降りる駅らしい。

「それじゃあ」

「ああ、頑張れよ」

「土方さんも頑張りなせぇよ」

それじゃあ、とヒラヒラ手を振り沖田は電車を降りて行った。
その後ろ姿を眺め、いつも思う。
例え距離が近付いたとしても、そんなの1ミリにも満たなくて、彼にとっては他人にといっても過言ではないのだろう。俺という人間は。
始まる前から見込みはないと知っていたのに。たった一ヶ月。こんなに短い時間でも深みに嵌ることはあるらしい。

「土方さん」

「ぎゃっ!?」

振り向けば、いつの間にそこにいたのか山崎が立っていた。
山崎とは中学から一緒で、クラスは違うが高校も一緒だ。仲が良いわけではないが。

「恋、してますね」

「…………何言ってんだか」

内心ギクリとした。コイツはこんなに鋭い人間だっただろうか。というか、そんな興味津々、といった態度で此方を見られても困る。
他人に相談するようなことではない。消さなければならない思いなのだから。

「誰ですか、この電車に乗ってる人ですかっ」

「ほら、降りねぇのか? もうついたぞ」

「えっ、あっ、ちょっと待ってくださいよ」

切符を探しながらホームに降り立つ。そのまま改札へ向かうがやかましい声は聞こえてこない。どうやら、人混みのお陰で山崎とははぐれられたらしい。
帰りに沖田といるところを山崎に見られないようにしなければ。勘が鋭いあいつのことだ。下手したらバレて学校中の噂になる。
どうせ噂になるのなら、晴れて結ばれたことが噂になってほしい。

叶わないことだと分かってはいるのだけど。





#40










入試、合格しました。








このさっぱりとした文面から私の心境を悟ってください。って無茶ですよね。



それじゃ、百人一首。病ネタです。








ひさかたの 光のどけき 春の日に
しづ心なく 花の散るらん





白亜の鳥籠





籠の中の鳥は自由を求め魂を解き放す。





死する者故の美しさがあるとすれば、彼女は幼い頃からその美しさを纏っていた。儚くて、消えてしまいそうな、そんな雰囲気も美しさも、病弱だったからこそのものだったのだと今になって思う。
総悟が高校へ通い慣れてきた頃、突然彼女は倒れた。
その頃は床に伏すことも少なくなっていて、病弱な体質も治ってきていると思われていたから誰もが驚いた。
見舞いに行ったある日、彼女は白い病室から開け放した窓の外を眺め、言った。

「私は大人になれるのかしら」

もう成人しているんだから大人だろう。そう返すと困ったように微笑んだ。彼女が言いたいのはそういう形式的なものではなくて。

余命が短いと悟ったのだろう。

「…ごめんなさいね、こんな…弱音みたいなこと言っちゃって」

「たまには、いいだろ」

「……そう?」

普段気丈に振る舞ってみせる彼女から聞いた唯一の弱音を昨日のことのように鮮明に憶えている。その言葉に、立ち尽くしたまま何も言えなかった総悟の表情も。
日に日に起きていられる時間が短くなっていって、目に見える程衰弱していった彼女を直視することが出来なくなった。総悟は怖かっただろう。自分の愛しい人がいつこの世を去ってしまうか分からなかったのだから。─────俺も怖かった。寝てる間にも電話がきたらどうしようだとか、不安で堪らなかった。

そして。

「……私、皆に会えて良かったわ、本当に」

そう言い残して、彼女は時を止めた。永遠に。
生きてて欲しかった。
もっと年とって、皆で昔話して笑いあったりしたかった。
葬式なんて行っても、実感がなかった。

死んでほしくなかった。誰よりも優しくて儚い、彼女には誰よりも幸せになってほしかった。幸せに、したかった。





「─────ヤな夢でも見てたんで?」

「…俺、寝てたのか?」

「えぇ」

ハァァ、と欠伸をして総悟は窓の外を眺める。その姿が彼女に重なって見えて、流石姉弟だなと変に納得する。
過去の夢を見ていた。といっても、彼女のことを思い出していた、の方が意味合いは近いのだが。
失う痛みを知っても、それを避けるべく行動することはできない。未来を、知っているわけではないし。だからといって、失うことに慣れる筈もない。ただただ畏れるしか、何も出来ない。

「姉上の夢を見たんでさァ」

「……お前もか」

「あんたも? 珍しいこともあるもんだ。同じような夢見るなんざ、そうそう体験出来やせんよ」

来るときに買った温かいココアは微かな温もりを残して冷えてしまっていた。片方を渡して、もう片方をよく振ってから開ける。自分には少し甘ったるい。コーヒーにしとけばよかった。
明日はコーヒーにしようと思ったが、来れないのだと思い出す。

「お前明日、卒業式だろ」

「あれれ。そうでしたっけ」

温もりを掬うように両手で缶を握り、じぃっと窓の外を眺めながら言う。その視線の先には何があるのだろうか。彼女と同じような瞳で空を羨ましそうに見ている。
総悟が入院したのは二ヶ月程前だった。都心では大雪がどうのと騒いでいた寒い日に、彼は姉と同じ病気で同じように倒れた。
だから、自分が辿るであろう未来の道筋を、行く末を知っている。
真っ白な部屋の中、彼は何を思い一日を過ごすのだろう。

「卒業証書、お願いしやす」

「言われなくとも持ってくるに決まってんだろ」

「……土方さん」

凛とした声が耳に馴染む。
死ぬことを恐れていないような所作に、俺はいつも戸惑ってしまう。怖くはないのか。この世界と決別することが。

「俺はあんたの知らないことを知ってる」

「……何だよ?」

「置いてく気持ちと、置いてかれる、気持ち。どっちもつれぇんだなって。……あんたはきっと、知り得ない」

「……」

怖くない、わけではないと、真摯な目が告げている。それでも恐れはしないのは逝った先に彼女がいると信じているからだろうか。
どうにか、死なずにすむ方法は無いのだろうか。もう二度と失いたくないのに、何もすることができない。
俺はあまりに無力で、ちっぽけだ。

「…俺と姉上の分まで、人生を満喫してくだせぇ」

「何言ってやがんだ。この馬鹿が」

そんな悲しいことを、笑顔で。

やはり、名前とは大切なものなのかもしれない。“総てを悟る”と書いて“総悟”。それならば彼女は、“小さな、ありふれたことを幸せとかんじられる”ように、“ミツバ”と名付けられたのか。

だから、この姉弟は醜く生に執着しようとはしない。
死にたくない、そう思っていても、人前にそれを晒さない。

「早く、こっから出てぇな………」

『早く、此処から出たいわ………』

姉弟揃って同じことを言う。本当に、彼は姉と同じ道を歩んでいるのだ。自らの意思とは裏腹に。
もしかしたら、後を追うことを総悟は望んでいたのかもしれないけれど。

「土方さん、今日あんた仕事だろィ。さっさと仕事に戻りなせェ。明後日、証書持ってきてくれりゃあいいから」

「……わかった。じゃあな」

病人にそう言われてしまったら素直に帰るしかない。身支度を整え、病室を出る。

本当は気付いていた。
己れの病気を受け入れると同時に、籠の中、檻から出ることだけを考えている鳥のように、総悟はただ待っているのだと。彼女はただ望んでいたのだと。
もう、誰にも迷惑をかけずにすむようになる時を。





#33
幸せについて本気出して考えてみた


というポルノの歌がありますが、本日私も考えてみた。
結果的には、幸せは人それぞれなんだから他人に自分のエゴを押し付けちゃいけない。というような結論なんですが多分、「でもさ、」とかそういうノリでまた幸せについて考えて、また同じ結果に辿り着きそうな予感がします。現に今回で二回目の堂々巡りですから。




気付けば二月も終わりますね。今年は閏年なので29日までありますが………………………ってそうだ。29日は合格発表ですよ。意識したら緊張してきました……。




気を取り直して、フライング気味だけど雛祭りネタです。
















いにしへの 奈良の都の 八重桜
けふ九重に にほひぬるかな





桜桃香





懐かしい声が名を呼んだ。
まどろみの中響くその声は、世界で一番好きな人のものだった。





『そうちゃん』

と、耳に馴染んだ声が俺を呼ぶ。だけど眠くて、瞼を開けずにそのまま寝っ転がっているとゲシッ、と腹を蹴られた。姉上はこんなことしない。それなら、誰が。

「ぃって………」

「そうちゃん……大丈夫?」

「さっさと起きねぇてめぇが悪いんだからな」

お前だって寝起き悪いくせに。言い返そうと思ったが、そんなことして子どもだと思われたくはない。渋々腹部を抑え、上体を起こした。力加減は少ししたらしい。だけどそれでも不快になるぐらいズキズキと痛い。

竹刀で勝負したら負けないのに。

この男は竹刀よりも喧嘩の方が強いし、年齢の差に比例して力の差もあるし、喧嘩だったら絶対に俺は負けてしまう。これは不可抗力というものらしい。

「そうちゃん、今日はお雛様の日よ」

「あれ? 今日でしたっけ…?」

明日だと思っていたのに。
ぼーっとしている頭を抑えつつ立ち上がる。
雛人形はこの間出した。午前中に出さなければいけないとかで、いつもより少し早起きして、近藤さんとか呼んで古くて少々汚れてしまっている七段飾りを。
その雛人形は母上の形見らしい。ずっとずっと小さい頃に死んでしまったから朧気にしか憶えていないけれど姉上に似た綺麗で儚くて優しそうな人だった。

「さぁ、おめかししましょ」

ニッコリと微笑む姉上に、今年こそは断らなくちゃと意気込むけれど、また負けそうな気がする。

「姉上、僕はもう病気になりやすくなんてないですから……」

「あら、だからこそやるのよ」

楽しそうに鼻唄を歌う姉上にこれ以上抗えなくて、助けを求めるように俺の部屋に立ち尽くしている土方を見上げる。けれど、これから俺が何をされるか分かっていない彼は不思議そうに首を傾げているだけで、俺を助ける気配はない。
今年も姉上の成すがままにされてしまうのか。近藤さんは止めてくれるわけないし、来年こそは事情を知った土方に姉上を止めてもらわなければ。




「……なんなんだ?」

半引きずられるように部屋を出ていった沖田を見送ってから、土方は縁側へ出た。すると、どこかからう~んと唸り声が聞こえてきた。
幽霊かと思ったがその声は聞き慣れたもので、角を曲がってみると縁側に座っている近藤がしきりに何か呟いていた。

「……近藤さん」

「おっ、トシ。なぁなぁ、でかいシャボン玉が出来ないんだけど」

「ってかあんたは何やってんだよ……」

手にピンクのシャボン玉液の入れ物を持ち、近藤はその液をよくつけたストローに向かって真っ赤な顔をしてふーっと強く息を吐いた。
が、小さなシャボン玉が出来るだけ。

「トォシィ~っ」

「知らねぇよ…」

『明日うちに来てくれって姉上が言ってた』と沖田が昨日言っていたから来たものの、何の為に呼ばれたのか未だ分からないままだ。
来る前に近藤さんに尋ねてみたらただ単に飯食うだけという話だったけれど。沖田の朝の様子からしてそれだけじゃないようだ。

「なぁ、沖田なんかやんのか?」

「総悟? ああ、あれな。見てのお楽しみだ」

今年はどんなだろうなー、と呟く近藤さんの表情はまるで『夢見る乙女』で、一体沖田は何をするのか予想もつかない。
ただ、ミツバははしゃいでいた。沖田は凹んでいたけれど。

がらがら、と障子が開きミツバが顔を覗かせた。

「あら、二人ともこんなとこにいた。そうちゃんの準備出来たわ。今年は今までで一番綺麗よ」

ふわりと笑み、彼女は再び部屋の中へと入っていってしまった。
綺麗、って何のことだろうかと悩んでいると、ほら、行くぞと声をかけられた。顔を上げると、朗らかな笑みを浮かべた近藤さんが、部屋の方を指差していた。

「ほら、早く食おうぜ」

「……ああ」

近藤さんに続いて部屋に入ると、道場では見ることの出来ない色とりどりの料理が並んでいた。例え同じ具材でも作る人によってこんなにも綺麗な物が出来るとは何だか凄い。
道場にいるやつらもこんな料理が作れればいいのに。むさくるしい連中には無理だとはわかっているがそう思う。

どうしたらこんな料理が作れるのだろうと悩んでいると、チリンと鈴の音が響いて、音のした方へ顔を向けた。
そこにいたのはミツバでも近藤でもなくて。
赤地に金の蝶が刺繍されている着物を着た金髪の少女がうつ向き気味に座っていた。頭に着物と同じ朱の大きなリボンと鈴をつけたその少女は、沖田と同じ年格好に見える。
そういえば、沖田がいない。てっきりミツバと一緒にいると思っていたのだが。


─────この少女、沖田に似ていないか?

「本当に綺麗だなぁ、総悟。やっぱ姉弟だな。そっくりだ」

「まぁ、お世辞言っても何も出ないわよ。……でもそうちゃんは本当綺麗よね。この着物もね、お母さんが着ていたものなんですって」

「へ~。そりゃすげぇなぁ」

「姉上も近藤さんもやめてください。僕、そんなこと言われても全然嬉しくないです」

ムスッとした瞳と偶然視線が合った。瞬時に頬を紅潮させいつもは憎まれ口しか吐かない唇をきゅっと噛む姿は普段の沖田からは想像も出来なくて。
笑みが零れる。

「あ、お前笑ったなっ!!」

「笑ってねぇよ」

「うそだっ!絶対いまバカにしただろ!!」

耳まで真っ赤にし、沖田はキッと俺を睨む。こうしていたら女にしか見えないのに、剣の腕は俺よりも上だなんて信じたくない。

「さぁ、食べましょ。そうちゃんも座って。折角作ったご馳走なんだから。あったかい内に、ね?」

「……はい」

未だムスッとしたまま沖田は座布団の上に座り直した。それにしても、これが毎年恒例なのだろうか。沖田の女装が?
なんで、女装? いや、女装というには語弊があるかもしれないが、雛祭りなら沖田は内裏をやるべきなのではないか? これじゃお雛様が二人になってしまう。

でも、まぁ、彼女が楽しそうならばいいか。




「なあ、トシ……」

近藤が副長室の障子を開けると、黒と金、二匹の猫が眠っていた。沖田はソファの上でいつものアイマスクをせずに、土方は机に突っ伏して眠っている。
微笑ましい光景に起こすのもどうかと思い立ち去ろうとすると、寝起き独特の眠たそうな声が聞こえた。

「…近藤さん」

「起こしちまったか?」

「いや……。寝ちまう予定は無かったからな。どうした? 近藤さん」

頬に書類の字を写したことに気付かず、土方は寝起きの一服をと、煙草に手を伸ばす。が、ライターが見当たらないらしく書類をかき分けあちこち探している。

「別に大した用じゃねぇんだ。総悟にコレ、渡そうと思ってな」

「? 何ですかィ、それは」

「っ!? おまえ、起きてんならそう言えやっ!!」

「何で一々“起きましたー”って言わなけりゃなんねぇんで? 馬鹿馬鹿しい。んで、近藤さん、何ですかィ?」

起きて早速喧嘩を始めるのかと思いきや、気分ではないらしく沖田は此方を振り返り後ろ手に近藤が持っているものを尋ねる。
土方も此方を見るのを待ってから、ジャーンと口で効果音を言いながら手に持っているものを見せる。
それは、出張した時に買った流し雛。
ここいらでは中々見掛けないもので物珍しさについ買ってしまったのだ。赤と青の着物を着た一対の紙人形が丸い紙の上、仲良さげに寄り添っている。

「へぇ、流し雛か。これを川に流すんだろ? 代わった風習だよな。流しちまうなんて」

「流すんで? こんなすげぇもんを、勿体ない」

「確か厄災を一緒に流すとかでよ。今から流しに行こうぜ。今年も平和に過ぎますようにって」

「いいですねィ。んで、帰りに土方の金であんみつとか買いやしょうや」

「オイコラクソ餓鬼。何ほざいてんだ」

ニヤリ、と沖田は土方に笑み、自分のポケットから土方の財布とライターを取り出す。それに、ハッと土方は自分のズボンを探る。けれど無かったらしい。青筋立てて土方は沖田を睨みつける。
バッ、と土方が立ち上がると同時に、沖田は駆け出す。

「ささ、近藤さん。行きやしょうや!!」

「待ちやがれェェェェェ!!!!」

二人がじゃれあう姿を見て、相も変わらず二人とも仲が良いな、と微笑みながら後を追った。





#61
受験前最後の小説アップです。
いや、あの、余裕とかじゃありませんよ。毎日毎日ちょっとした時間にうってたんです。塵も積もれば山となるんですよ。

数学の応用が全然出来ません。コレやばい。
だからこそ大詰めである来週は死ぬ気で勉強します。

それでは一応、バレンタインネタ。













人もをし 人も恨めし あぢきなく
世を思ふゆゑに 物思ふ身は





粉砂糖





カラカラカラ、古く軋む窓を開けてみるとうっすら、雪が積もっていた。
ハァァ、と吐いた息は見事に真っ白で、それを見て漸く寒さが体を襲った。天気予報じゃ暖かい一日になるでしょう、なんて言っていたのにどこが暖かいんだと何の罪もない天気予報のおねーさんに八つ当たりしてみる。彼女だって、渡された資料を呼んでいるだけなのだろうに。

ホワイトデーはバレンタインのチョコのお返しの日だ。ならば、雪が降り積もったバレンタインデーは何と言うのだろう? ただ、“ホワイト”をつけるだけなのか、それともクリスマスみたいに特別な呼び方が無いのか。

思考も大分スムーズになったとこで窓を閉め、布団に戻り、足に布団をかける。
やっぱ冬場は冷気を浴びれば一発で目が覚めていい。目覚ましをセットしても無駄な私は、大抵は無能な上司に起こされる。朝一で会うには不快な奴に起こされるのは気分いいものではない。


そろそろ、今日もまた来るだろう。


ギシッ、ギシッと規則的な間隔をあけ耳に届く足音は、この部屋の前で止まった。

「起きろー………って起きてたか」

「当たり前でしょ。こんな時間ですよ」

「いつもは起きてねぇだろ、お前」

呆れたようにそう言った後、ここからが本題だとでもいうように土方は咳払いし、表情を改めた。

「何ですか」

「今日、バレンタインだよな」

「………だから?」

どことなくそわそわしているのはその所為か。

理由はわかっているけれど、わざと未だわからないふりをして聞き返す。
チョコをあげる気なんて、さらさら無いから。

「チョコくんねぇの?」

「当たり前。あんたなんかにあげたらチョコが腐る」

「上司に向かってその言いようはねぇだろ。だから、“普段お世話になってますぅ”って義理チョコとかさ、」

「ありえませんね」

実をいうと、少しは悩んだ。やはり常識的にあげるべきだろうかと。常識的に─────つまり、“普段大変お世話になっている”人にはあげようかなと。
だから、近藤さんのは用意した。
チロルチョコの詰め合わせだけれどそれでも、きっと喜んでくれるだろう。きっと、“ありがとう”と温かな笑顔で受け取ってくれる。
で、問題は土方だった。世話になっているとは一切思わない。けれど“上司”という肩書きが向こうにはある。それだけでお世話になっているような気さえしてきてしまう。実質的にはそんなこと無くても。
というわけで散々悩んだ。


が、結局は買わなかった。

「お前…本当………ありえねぇだろ…」

「そうですかね?」

脱力し、くったりと障子によりかかる土方を見て何故そこまで凹むのか不思議に思う。私から貰えなくても、そこの団子屋の娘とか、薬屋の前に住んでいる娘とかから貰えるだろうに。


─────ああ、そうか。
どうせ今年もまた、新八とかとチョコの数を競っているのか。
去年は新八が惨敗し、一週間近く罰ゲームで猫耳をつけさせられていたような気がする。
くだらない、と思うけど傍観しているのは面白い。今年は土方が負けるといいのだけど、多少なりともモテる土方が平凡な人間である新八に負けるはずがない。
どうにか、手をうたねば。

「土方さん、チョコの数私と勝負しません?」

「…いきなりどうした」

「猫耳つけて巡回してる土方さんが見たくって」

「俺が負けるの前提の提案だよなソレ。誰がやるか」

「私が負けたら何でもしますよ。チョコくれっつうならあげるし、土方さんの靴に画鋲仕掛けたこととか、真夜中に目覚ましかけたこととかも謝ります」

「やっぱお前だったんだな? あの地味な嫌がらせの数々は。……仕方ねぇ。やってやるよ」

絶対に勝つ自信がある。
だからこその提案に易々とのってしまう土方は俗っぽくて浅はかで、この人らしい。“鬼の副長”なんて呼ばれて畏れられたりしているけれど、私から見たら誰よりも優しくて、何をしても最終的には甘受するただのお人好しだ。だからこそ、冷徹になりきろうとしている。……できもしない、ことを。

「土方さんは私らの中で一番脆い」

「はい? いきなり何言い出してんのお前」

「なんとなく」

だからこそ、私はこの人と喧嘩しながらも毎日毎日懲りもせず言葉を交しているのだ。脆くて弱い自分を晒けだそうとしない、この人だから。





#99
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