コンコン、とノックの音。その後、スーッと扉が開いた。
「副長」
「あ?」
報告書に囲まれている土方は山崎の予想通り、機嫌が悪い。
ただでさえがらが悪いのに。益々がらが悪くなっている。
いま、この状態のこの人に、コレを渡すのは火に油を注ぐようなものだ。
でも、それが山崎の役目なのだ。
「・・・沖田隊長の報告書です。」
言いながら、山崎はそれを差し出した。
「・・・ん。」
土方は報告書を睨んだまま、書類を受け取った。
――――いまの間からして、覚悟はしてるらしい。
沖田の報告書は、字は小さく汚いし、誤字・脱字が素晴らしく、多い。
「・・・ったくあの野郎は・・・。」
さぁ、今回は何をどのように間違えたのか。
山崎はハラハラしつつ小言を言われるのを待った。
やがて、溜息混じりに土方は呟いた。
「名前間違えてやがる・・・」
「えっ!?」
「沖田の“沖”が“仲”になってやがる・・・。アイツは何歳だ?」
一応、ティーンエイジャーである。
いくら誤字・脱字の常習犯とて流石に名前を間違えるとは二人とも思っていなかった。というのはまぁ当たり前だろう。
「・・・ハァ。」
土方は大きく溜息をついた。無能、ではないが、頭が弱すぎる。なんでああにも極端なんだろう。剣の腕は確かなのに。
当の本人は、というと―――縁側で呑気に惰眠を貪っている。
今日、これやったんですよ。沖を仲って。慌てて書き直しましたが。
最後までお読み頂き、有難うございます。