放課後、とはいってもまだ完全下校前だが、宿題をとりにわざわざ家から走ってきた。
宿題を忘れる、という行為を俺はしょっちゅうやる。宿題なんざやりたくない。という気持ちの表れだか知らないが、多分そうなのだと思う。だが、根が真面目らしい俺は毎回、本当律儀にとりに戻る。
自分で自分を誉めたいぐらいだ。
・・・教室の前まで来たとき、中に誰かがいるのに気付いた。条件反射といえるのかはわからないが出来る限り気配を消して中へ入っだ。
どうやら、睦流のようだ。席も睦流の席だし、何より、男の中にはこんな滑らかで綺麗な黄金色の髪をしたヤツは一人しかいない。
声をかけようと思ったが、寝てる可能性もあるからやめといた。なにせ、顔を隠すようにしているからわからないのだ。
とりあえず早く宿題をとって帰ろう、と思いとった瞬間ドサッとロッカーの中から分厚い教科書が落ちた。バッと振り向くと、睦流の肩がびくっと動き、こちらをとても素早く顧みた。
「・・・」
その頬には涙が一筋。
眼鏡をかけていなかった、ということは寝ていたのだろうか?それで悪夢でも見たのか?
「どうしたんだよ?」
また俯いた睦流に近づいてって声をかけた。
「・・・別に」
が、睦流は素っ気なく答えただけだった。
「それ、口ぐせなのか?」
野次るようにいうと、顔をあげてこっちを睨んできた。制服でふいたのか、もう涙は微塵も残っていなかった。
「・・・悪夢みたけど?それが、何?」
全く、可愛くない。嫌われるタイプだ。
「慰めてやろうか?」
「煩い。ウザイ。失せろ」
本当、ムカつく。が、どうにかして弱みを握ってやりたい。俺は睦流の真前の席に後向きに座った。
「どんな夢だよ」
「・・・」
「悪夢は人に言ったほうがいいんだぜ」
そう言うて案外あっさりと口を開いた。
「・・・プールに入る夢」
・・・。
ハァァ!?それ如きで泣けるのか。すごい涙腺の持ち主だ。
「・・・昔、プールに突き落とされてから水が駄目なんだよ」
「それって・・・・」
イジメではないか。と言おうとしたが、視線で遮られた。
「これでいいだろ?弱み握れたんだから」
ばれていたのか。だが、まぁいい。何せ完全無欠の秀才の弱点を見つけたのだから。
「・・・でも、泳げるけどね」
その一言を、花明は聞いていなかった。
沖田と土方でできそうな気がしてきた。