初めて会ったのは、桂介に無理に連れていかれた祭りでの事だった。
その神社では毎年、とある有名な舞踏の家から一人呼んで、祭りの最後で舞ってもらうそうだった。
その時間まで暇をつぶそうと俺らは屋台で売ってる物をたくさん買い、人の少ない境内の裏へ向かった。
「トイレ行ってくるわ。俺の綿菓子、食うんじゃねぇぞ?」
「わかってるよ」
桂介が便所へ行き少したった頃、キャッと女の悲鳴がきこえた。好奇心旺盛な俺は直ぐ様駆け出して音源へとむかった。
そこにいたのは大層な着物を着た少女だった。とはいっても、自分よりは年上だったけど。
どうやら、風で髪が枝に絡まったらしい。近づいてって解いてやると、彼女は、
「ありがとう」
と気高く、恥ずかしそうに呟いた。その仕草が妙に愛らしく、見惚れていたが彼女は用事を思い出したのか一礼してから急ぎ足で去っていった。
「・・・名前、きいときゃあよかったな」
だが、後程再会することになった。彼女は、舞姫だったのだ。この祭りでの、主役。
俺は食い入るようにして見たが、お世辞抜きでとても綺麗で幻想的な舞だった。舞とかそういうのにあまり詳しくはないが、キレがあって、優雅だった。
「ねぇ」
祭りが終わり、帰ろうとしたところに声がかかった。振り向くと、そこには先程の舞姫が。隣で桂介が息をのむのがわかる。
「貴男のお名前は?今度お礼をさせてください」
「鈴川花明」
「私は和香。よろしくね」
眩しい程の笑顔に魅了された。
なんとか影響をうけずに済みました。