“夢”とはとても凄いものだと思う。未来のことも過去のことも、良いものも悪いものも否応なしに見せる。
そしてそれを忘却させる。
記憶から削除されたものなどを見せたとき、肝心なところは忘れるように、と。
“ココロ”が壊れたら宿主が危なくなるから。
だけど、たとえ何を見たとしても、
ユメは夢
Ma cherie 第八話
パン、と何かのアニメの主人公みたいに沖田は手を合わせた。
「ごちになりやした」
「ん。片付けぐれぇ、やれよ」
「へーい」
頼んだはいいが、皿を割ったりはしないだろうか―――――。というのは杞憂で終わった。手伝いついでに流し場を見てみると、綺麗に重ねてあった。
こーゆーのは出来んだな。と褒めると、これくらいしかできやせん。と苦笑混じりに返ってきた。
総悟でも苦笑することがあるのか、と少し感心した。
「さて・・と。俺はソファで寝まさァ。寝心地いいし。布団、貸しなせぇ」
「何言ってんだよ。てめぇは客だろ?ベッドで寝りゃあいい」
客用の布団なんてある訳ない。というのがわかってるらしく、沖田はソファで、と言ったが、押し掛けられたんだろーがなんだろーが客は客だ。ソファなんざで寝させない。
「そんでアンタがソファで寝るんですかィ?」
「そうだ」
沖田は、それこそ信じられない。と反論した。
「それでアンタが風邪でもひいたらどうするんで?俺が勝手に押し掛けたんだから、俺がソファで寝まさァ」
「だから、それじゃあ俺の気が済まねぇっつってんだろ!?耳ン穴よくかっぽじれ!」
「ンなこと聞こえてまさァ!・・埒あかねぇ。頑固頭!なんで一緒に寝る、とか考えらんねぇんで!?」
・・・そうか。その手があった。
「そう・・・だよな。掛け布団も一枚しかねぇしな・・」
「ハァ!?しっかりしなせぇ。ボケボケですねィ・・」
反論の余地もない。総悟の言う通りだ。なんで忘れてたんだ?ありえねぇ。 ってか、もしかしたら最初からそれを狙ってた・・のか?
足元に下げていた視線を上げると、一人で凹み、沈思黙考していた土方を観察していた沖田と目が合った。ニコリ、と沖田は誤魔化すように笑った。
「もう寝やしょうか」
「・・ああ」
「俺、右側」
「どっちでもいいだろ」
餓鬼臭ぇな。どっちに寝る、とか。大学生がそんな事言うか?普通。
沖田が布団に入ったのを見計らって、電気を消そうと手をのばした。
「真っ暗にしてくだせぇよ」
「お前、馬鹿にしてんの?」
土方は電気を全て消した。が、カーテンの隙間から月明かりが漏れて、真っ暗にはならない。このぐらいの明るさが土方は好きだった。
さて、横になろう、と横たわった瞬間、横腹を何かが掠めた。
「っ・・!」
何か・・・とは一つしかない。沖田の手、である。
「てめっ・・・!」
「五月蠅ぇなぁ・・。いいじゃねぇか抱きつくぐれぇ」
嫌に決まってる。何が悲しくて男に抱きつかれなきゃならねぇんだ。
「・・・嫌に決まってんだろ」
思った事をそのまま告げた。すると、沖田が離れていった。
何か、ある。
さっきだって急に擽られた。また擽られるかもしれない、と思い身構えたが、何もしてこない。
「総・・悟?」
「何」
もろ不機嫌、という声で素っ気なく返事が返ってきた。
本気で、怒ってる気がする。
「・・悪かったよ」
正直、何が悪いのかわからないが。
「何が」
急にどっと疲れてきた。コイツ、こんにキャラだったっけ?
「・・・もう好きなようにしろ・・・」
溜息混じりに呟くと、沖田は寝返り、土方に向き直った。
「じゃあ好きなようにしやす。俺、これからアンタと話さないから」
「ハァァァァ!?」
すねてる沖田。