ドタドタドタ、と廊下を派手な足音を立てて大股で走る。めざすは、沖田の部屋だ
途中、新八がヒョイ、と頭を覗かせ危うく膝蹴りしそうになったが、滞りなく沖田の部屋へついた。そして、深く息を吸ってからガラッとまた派手な音をたてて障子をあけた。部屋にいたはいたが―――
「革命っ!」
「フッ・・・。近藤さん、そんなんでこのあたしに勝てると思うの?」
「え・・・?」
「受けてみよ!革命返しっ!」
「何ッ!?」
なんでたかが大富豪にこんな白熱してるのか、どうしてそんなことが出来るのか、全く理解できない。
暫く呆然と立ち尽くしていたら、勝負が終わったのか沖田がにこにこしながら振り向いた。その後ろで、近藤がしょぼしょぼと背を小さくし、カードを混ぜていた。
「で、土方さん、何?」
「え?・・いや・・・別に」
ホントは用があって此処まで走ってきたのだが。
「じゃあ土方さんもやりましょ。あたし、負けないから!」
「え・・ああ」
つい、流れにのってしまい自分まで加わってしまうことになった。まぁ、楽しそうだからいいか。
そして気が付けば―――己までノリノリになってしまっていた。
「革命!」
「なんの!革命返しっ!」
「お前ら甘いなァ。オラッ、革命!!」
「「なっ・・・!!!」」
俺が初めてビリになったとき、沖田があっ、と小さく呟いた。
「?・・・なんだよ?」
「次の勝負、負けた人が勝った人の言う事聞く、のはどう?」
「・・・いっちょ、やるか」
「よし、やってやるよ」
「じゃあ、いくよっ!!」
そして、結果は―――。
「じゃあ、二人で買い物行ってきてくんない?ちょうど煙草とか酒きれてんだ」
「ハーイ」
役職が高い順に一位、二位・・・となり、俺らはパシられる事になった。まぁ、聞きたい事もあったしちょうどいいのかもしれないのだが。
色々買った帰り道、土方は先程からずっとききたくてうずうずしていた事をきいてみた。
「新八にコクられたって本当か?」
「土方さん、なんで知ってんの。」
・・・ということは本当なのか。身近に敵がいたとは夢にも思わなかった。だって、こんな女、普通好きになんねぇだろ。ガサツで男勝りで、飯とかがつがつ食って色気なんざ無縁だし。
「・・・で?付き合うのか?」
「・・今日の土方さん、なんか変だね」
少し、素直になっただけなのに、ひどくねぇ?
が、今日の沖田も変だ。土方の質問に正直に答えた。
「付き合わないよ」
「・・・ふーん」
内心、物凄く喜んでいるのに、それを隠す為、素っ気ない反応を返してしまった。いくらなんでも、素っ気なさすぎたか?
「じゃあな。これは俺が渡しとくからさ」
「サンキュー、土方さん。」
土方はきびすを返すと、足早に近藤の部屋へと向かった。自分には微かだが希望がある、ということに軽くガッツポーズまでして。
遠く、背景とほぼ溶け込んだ土方の後ろ姿を眺め、沖田は呟いた。
「好き、って言ってくれればいいのに・・・」
土方の恋心(笑)に気付いてる沖田でした。