「・・・何してんの?そうこちゃん」
「総悟です。」
いや、名前の訂正よりも質問に答えてもらいたいのだが。と思った矢先、沖田は質問に答えた。
「見てわかるように、起き上がりこぼしで遊んでやす」
が、やはり求めていた答えとは少し違う。やはり、沖田は変わってる。と思ったが、もしかしたら自分の訊ね方もおかしかったのかもしれない、と思い直し少し言い直して再度訊ねる。
「何で公園の端っこで、一人淋しくンな事してんの?っつーか、それ、きみの?」
まくしたてるようにきいたら、ポツリ、と沖田は独り言のように口をひらいた。
「・・・其処に落ちてたんでさぁ、」
と指差したのは後ろにあるベンチの下。
「で、なんかすごいなーと思いやしてね」
沖田が遊んでいるのは、何処にでもありそうな、くたびれた起き上がりこぼしだ。凄そうな処など何一つ、銀時にはわからない。
相変わらず起き上がりこぼしをいじったまま、またポツリポツリと沖田は言う。
「・・・倒れても、また立ち上がって、また倒れても立ち上がる。」
「何気に簡単そうに見えて難しいんでさぁ。これって」
「・・・ひとなんざ、倒れたらスグには立ち上がれねぇ。もしかしたら、ずっと倒れたままかもしれねぇ。」
「・・・なのに、コレは何回も何回も繰り返し、立ち上がる。」
だって、そうじゃなきゃ起き上がりこぼしではないだろう。
なんて答えがかえってくるのは、沖田には分かり切っているのだろう。それでも、誰かに言ってみたかったのかもしれない。
心だろーが躰だろーが、傷を受けても平気、なんて事があるはずもない。それはもう“ひと”ではないだろう。ひとだからこそ傷つき、そして強くなっていくのだ。
それを職業柄常に意識してしまうのだろうか。まだ幼いのに?
「・・・旦那?」
珍しく本気で考え込んでいる様子の銀時に沖田は顔を上げた。
「あ・・・え?」
「ここでさぼってた事・・・それから言ったこと、全部忘れといてくだせぇ」
「・・・多串君に言ったほうがいい答え貰えんのに?」
「別に、答えなんざいりやせんよ」
それは建前に決まってる。自分の中でうまれた問いに答えを求めない者なんかいないはずだ。
「死ぬ時までにわかってりゃ、それでいいんでさぁ。じゃあ。」
「・・・俺よか大人だな、総悟君はさ」
そこまで幼くはなく大人びているけれど、やはり何処かこどもっぽい。それがちょうどいい。誰にとっても。
あ、なんか奧深いなぁ起き上がりこぼし。