「土方さーん」
珍しく沖田から話しかけてきた事に驚いたが土方はなるべく無表情で答えた。普段ならそんなことは無理なのだが、いまは寝不足が手伝って無表情、というよりはもとから険しい顔を更に険しくしていたのだろう。
「あんだよ」
沖田も険しい顔を返してきた。
「隠れ鬼」
その言葉の続きを待ったが、沖田は土方の顔をじぃっと見つめるだけで口を開かない。
「・・・が、何?」
焦れったくて聞き返すと沖田は冷たい目で見てきた。ふー、やれやれ。と聞こえそうな程わざとらしく肩を竦め。
「だから、やろうって意味でさぁ。・・・ 」
「オイ、いま、これだからアンタは・・・って口パクしたな?」
「してねぇよ。ほら、俺鬼やってやりやすから」
妥協したような口振りに、土方は怒鳴りあげたくなったが、拳を握りギリギリのところで踏みとどまった。
早速、数え始めようとする沖田に土方は待ったを入れた。
「二人だけかよ」
もとからなかったやる気が、更に失せてった。それに気付いたのか、沖田は条件を出してきた。
「あんたが勝ったらなんでもしてやりやすよ。まぁ俺が勝ったら・・・ねぇ?」
その続きはきかなくてもわかる。
「・・・本当だな?」
「へぃ。じゃあ、数えやすよ。・・20数えたら探しまさぁ。いいですねぃ?」
「ああ」
そういい残し、土方はタタッと廊下へ飛び出た。 それを見ずに沖田は両手で顔を隠し数え始めた。
「・・1・・2・・3」
ゆっくりと同じペースで沖田は数える。どこか余裕そうに。
「・・19・・20」
数え終わった後、沖田は思いっきり息を吸い込んだ。そして―――――
大声で叫んだ。
「いってぇぇぇぇ!!」
その後、畳に横たわった。
「オイッ、どうしたっ!?」
土方の位置からでは背中しか見えない。音もたてず土方は沖田に歩み寄り、肩に手をかけ、自分のほうへくっ、と力を込めた。
「なっ・・・!!」
苦しそうに眉を寄せている、と思っていた土方は呆気にとられた。
沖田はニヤリ、と笑い、みぃつけた、と呟いた。
脚色80%です。
道場時代の捏造です。だって史実も原作もこんな仲よくありませんもの。