土方はある店の前で立ち止まった。そして、意を決して目を閉じ、がらりと戸を横に引いた。
「いらっしゃぁー―――――ゲッ」
低い、がらがら声を想像していた土方だったが、その声はそこまで低くはなく、中々綺麗な声だった。が、なんか聞いた事がある。
「・・・?・・!おまっ、もしかして総悟かっ?」
バッ、と目を開くと、ミルクティー色の髪を頭の後ろで結わえ、紅をさし、黒い襦袢に紅い打掛を着ている美女―――ではない。見た目はそうだが、相手は男なのだから美人、にでもしておこう。―――がいた。たしかに面影は沖田に――ミツバに似ている。
「・・・」
沖田は苦虫を踏み潰したような顔で押し黙った。
「なんでここにいんだ?」
「・・・知りてえ?」
*
沖田曰く、この間偶然この店の前で桂に出くわしたのだが生憎逃げられ、この店に
もしかしたら来るかもしれない―――という事で渋々働いてるらしい。
それは、わかったのだが。
「うわぁ、マヨ子さん。めっちゃ似合いまさぁ。あんたが女だったらほれてますぜ」
「いらねぇお世辞だな。」
何故自分は鏡台の前に座らされ、女物の服なんざ着せられてるのか。しかめ、ご丁寧に薄く化粧までしてある。
「・・・つかマヨ子ってなんだよ?」
「マヨが大好きなマヨ子。」
「てめぇはなんだ?サド子か?サド美か?」
「・・・総子」
案外あっさりとした名前だ。ならば、だ。自分もトシ子でいいんではないか?
その時、がらっと化粧室の戸が開いた。
「あっ、パー子さん。今日は新入りきやしたぜ」
「えっ?マジ?」
パー子こと銀時は沖田の後ろを覗き見た。そこにいたのは、瞳孔開き気味の不機嫌そうな顔をした、見覚えのある美女。
土方のほうも見たことあるな、と思っていたが、あと少しででてこない。
「・・・マヨ子って感じ?」
「大正解でさぁ、旦那・・・じゃなくてパー子さん。」
「ってお前坂田かァァ!?」
土方の奇声を無視し二人は会話を続ける。
「何?ばれちゃったの?単独捜査。」
「へぇ」
「ってきけよ。」
「ん?なぁに?マヨ子。」いい方にむかついたが、それよりも。
「お前、知ってたのか?コイツが単独捜査してるって」
この頃夜いねぇな、夜遊びでもしてんのか?程度しか考えていなかった。コイツは――総悟はそういう事をあまりしないのに。
沖田は居たたまれなくなり、二人に気付かれぬよう部屋を出た。
「知ってたよ。ヅラを捕まえようとプライド捨ててんだろ?健気だなぁ。」
なんか、むかつく。コイツが知ってたのに自分は知らなかった事を。総悟が何も言わなかった事を。
「てめぇらに見られたくなかったんじゃねぇの?恥ずかしくてさ」
仮にそうだとしても――――。
「てめぇは黙ってろよ?」
そう銀時に言い付け、扉の外で聞き耳をたててるであろう沖田のもとへ大股で歩いてった。
あれ?なんかシリアス入った?ギャグに修正したい。